第27章 アップルパイ
ー穂波sideー
「穂波が料理してるとこ見るのが好きだから、
カウンターキッチンかオープンキッチンがいいなって想像した」
…だって。
ゲーム部屋とか、もっと研磨くん個人のことを想像していたから、
ふいうちで何も言葉が出なかった。
『…ゲーム部屋にはわたしもはいっていいの?』
少しの沈黙のあと、やっと言葉になったのは思い付いたこんなことだった。
「え、うん。もちろん。穂波邪魔しないし。
あ、でも…入ってもいいけど話せない時はあるかもしれない」
『…うん、わかった』
わりと具体的な返事がきて、うまく話を続けれない。
嬉しい、嬉しすぎるくらい嬉しいんだけど…
「…高校の後のこととか、なんか前と変わった?」
『えっ』
「別に急かしてるわけじゃなくて、なんとなく、話の流れで思っただけなんだけど。
おれは大学行きながら、なんかできたらなーとか考える」
『…なんか?』
「…なんか、まだわかんないけどゲームかな。お金、稼ぎたい」
『へぇ…』
「自分のやりたいことやりたいだけするにはやっぱお金を稼ぐのが手っ取り早いから」
『なるほど…』
研磨くんがちょっと、いつもと違う。
ふわふわしたことっていって、いつもは言わないことを話してくれてる気がする。
「…それ以外はちょっとまだ曖昧すぎてふわふわしすぎてるから言えないけど」
『…ん。研磨くん、話してくれてありがとう。嬉しいよ。
それから、話せないことはまだ話さない、っていうのもすごく嬉しい。研磨くんだぁって感じする』
「…?」
『わたしはね、大学に行くことと仕事としてやりたいことが繋がるかはわかんないんだけど、
でも学んでみたいことはある。
大学行っていいよ、って言ってくれる環境があるから行こうかなとは思ってる』
「うん」
『仕事としてやりたいことは漠然としたイメージでしかないから、
それはまだわたしも言えないというか自分でもまだ掴めてないから言いようがない。
大学は…多分、海外の大学に行く』
「…うん。 なんで海外なの?」
………。