第27章 アップルパイ
ー研磨sideー
部活の後クロと駅に向かうと、もう穂波がいた。
色落ちデニムにアイボリーのカットソーと同じような色のざっくりしたカーディガン、
白いコンバース。
カットソーの首元は開いてて、鎖骨もネックレスも見える。
声をかけるや否や抱きついてきた。
一昨日、学校で会ってたし、そんな会いたかったって抱きつくような感じじゃないと思うんだけど…
でもまぁ、穂波は実際こういうことよくある。
高校がある駅だから他の部活の生徒もいるし、週末だから人も多い。
けどもう、そういうのも別にどうでもいい。
軽くキスをして、手を繋いで歩き出す。
「穂波の私服久々。BBQと祭りのときは浴衣だったし。…かわいい」
『…ん。 …研磨くんもいつもかっこいい』
「…ん」
…これ夜久くんに聞かれたら、いちゃこらって言われるやつだ。
でもいちゃいちゃしてるんじゃなくって、ただ言いたくなるから言ってるだけなんだけど。
なんでそれがいちゃこらになるんだろ。…まぁいいや。
石神井公園で弁当食べるの、すごい久々。
試験期間のときとか、穂波と寄り道してふらっと歩いたりはするけど、
弁当もってこうやってくるのは去年の夏以来だ。
桜を見にきた時はコンビニで買って食べたし…
今日は雲が少なくて、よく晴れてる。風もないから、結構あったかい。
よかった、丁度いい天気な感じがする。
天むす(海老、ちくわ)、椎茸の肉詰め、卵焼き、
にんじんの胡麻和え、茹でブロッコリー、紫キャベツのスパイスマリネ。
りんごと梨。
「…うま。穂波の弁当久々」
『ふふ。秋のお弁当もいいね。少しずつ紅葉も進んでて…綺麗』
「…だね」
そっか、桜もだけど紅葉もあるのか。
また見に来れるといいな、とか。