第26章 手のひら
10月8日(月)
合宿最終日。
今日で、春高前…3年生のいる合宿が終わる。
もし次の合宿にも参加できたとしても、
もうクロさんも夜久さんも海さんもいないんだなぁ。
仁花ちゃん以外のマネージャーのみんなも、光太郎くんも。
卒業は悲しいことじゃないけど、やっぱり寂しいなぁ…
とか思いながら、薄暗い校舎をぼんやりと歩く。
まだ、朝食準備まで時間がある。
正面玄関の外に腰掛けて、ぼーっとする。
空がだんだん明るくなっていくのをみる。
空に手をかざして見上げる
こうするのが好き
なんでかはわかんないけど
しばらくそうやって手の甲と空をみていた。
それから手を上にあげたままごてんと後ろに寝転がる
『わ』
頭を置いたすぐそこに京治くんの足があった。
つま先がわたしの頭頂にあたる。
もちろんその先には京治くんの身体と顔がある
京治くんも空に手をかざしていたみたいで、手はそのままにこちらを見下ろす。
「あ」
京治くんは足を咄嗟に動かそうとする
『あ、京治くん、待って、動かないで』
「え、あ、うん」
浮いた踵が地面に着く
こんな真下から見上げることって、研磨くんにもしたことないや。
なんだか、新鮮。 今度研磨くんのこともこうして見てみよう。
影のつき方とか…
10月の朝だから京治くんの脚はズボンで見えないけど、
脚の筋とか、ここから見たらきっと綺麗だろうな…
しばらく空と京治くんのこの画を楽しんだ
「…えーっと、穂波ちゃん」
京治くんの声にはっとする。みいってしまっていた。
動かないでと言ったから、京治くんは手もかかげたままでいる。
『…あ、ごめんね。見惚れてた。 …もう大丈夫、ありがとう』
下ろしていた手を京治くんに向かって伸ばす
京治くんは身体をかがめて手のひらを重ねた
上下が逆だから、わたしの手首の方から京治くんの指がみえる。
大きな手。すこしゴツゴツとしてて、すこし太め。
男の人の指というのは、どうしてこうも色っぽいのだろう。