第26章 手のひら
『研磨くん…すき』
「…ん。おれも」
優しくてあまぁいキスを一度。
ゆっくりと唇が離れる。
身体が離れたところで廊下が明るくなる。
懐中電灯の灯り。
「おい、お前こんなとこにいたのか」
烏野のコーチの方の声がする。
「しゃがむよ、穂波」
小さな声でそう言われ、すっとしゃがむ。
椅子に身体が当たって少し音がしたけど… 多分大丈夫
「…ん? なんか音がしたか?」
廊下の窓から眩しく教室が照らされる
どきどき…
「誰かいるのかー? 音駒の2人かー?」
『 ! 』
「 ! 」
「いねーか。 もしいるんなら… 避妊はちゃんとしろよー」
『 !! 』
「 !! 」
それから烏養コーチは直井さんを起こして連れて行った。
そんな、声と音が聞こえた。
『…烏養コーチって』
「なんなの、あの人」
『…結局いないと思うけどけど一応、って感じだったよね?』
「うん、多分」
『…音駒の2人ってわたしたちのことかな?…他にカップルいる?』
「…笑 どういうこと?」
『いや、わたしが知らないだけで…』
「…笑 おれら以外の音駒の2人って例えば?」
『…うーんと、夜久さんとクロさん? リエーフくんとクロさん?』
「…笑 なんで穂波の中ではみんなバイの設定なの? …クロ 笑」
『なんでって… 別におかしいことじゃないもん』
「…いやそうだけども。 おれもなの?」
『研磨くんは違うって言うけど、わかんないよねって思う』
「…ふーん 翔陽に妬きもち妬くかもしれないんだもんね」
『…うん、可能性はゼロじゃない』
「…ぶっ 笑 やばい、こんなに真剣にこんな話するとは。
穂波、ズボンはいたら?寒くない?」
暗くて見えないので変な格好なのも忘れて真剣に考えてた。
上はジャージで、下はなにも履いてない…
さささと着替えて、
研磨くんのiPhoneで照らして異物が落ちてないか確認して教室を出た。
あんま見えないから、明日の朝もう一回みよっと。