第26章 手のひら
ー月島sideー
「最後は、俺が手ぇ広げるからちょっと遠くから走って飛び込んできて!」
黒尾さんたちから少し遅れて調理室へトレーを持っていくと、
大きな声でそう言いながら腕を広げてる木兎さんと、
さまざまなリアクションをとる各校マネージャーがいた。
引き続気味で見ている人、にこにこ静かに笑ってる人、くすくすと笑い声をあげている人。
黒尾さんはやっぱり若干引き気味の顔で眺めている。
『…笑 はーい!じゃあ部屋の端からいくね』
そう答えるのは、穂波さん。
…は?胸に飛び込んでいく的な?
最後は、ってことはいくつかしたってこと?
何してんの一体、この人たち。
「よっしゃいつでもおいでー!」
『……フゥ .…光太郎くーん!』
そう言って、穂波さんは木兎さんに向かって駆け寄って、
腕の中に飛び込んでいく。
木兎さんは腰に腕を回して抱き止めて、持ち上げるとくるくると回った。
…何これ。
馬鹿じゃないの。
「あー馬鹿馬鹿しい。木兎、風呂いくぞー」
「木兎さん、もう穂波ちゃんから手を離してください」
「ぉあ!ツッキー!」
『えっ あっ 蛍くん!』
木兎さんから解放された穂波さんが駆け寄ってくる。
…え、あ、ちょっと これって
・
・
・
「…なんで」
穂波さんが僕に抱きついてきた。
『…蛍くん、お疲れさま』
抱きついたままこっちを見上げて、喋るのとか… 無理
「あぁ、はい。お疲れさまです。 …あのちょっと」
『うん?』
「いや、だから…」
もう何度も抱きしめてるけど、
人がいるところでは …してないし
抱き付かれるのとか、 …いやほんと、無理。
「一旦、離れてもらっていいですか」
『…えっ あっ ごめん!今、光太郎くんとハグしてて、つい感覚が…』
「…それはわかりますけど。 続きはゆっくり2人きりでしますから」
なかなか離れないので身体をかがめて耳元で囁くようにすると
穂波さんは顔を真っ赤にして ばっ っと身体を離す。