第26章 手のひら
ー穂波sideー
レッスンから戻ると自主練をしていた数人がまだ、
部屋でご飯を食べているだけだそうで
洗い物も知れてるな、ということで、
カフェで買ってきたパウンドケーキを出して
みんなに食べてもらいながらいろいろ話した。
わたしは夕飯を食べながら。
仁花ちゃんとわたしを除いてここにいるのは
みんな3年生だから進路の話とか、
春高予選の話…部活の思い出話… いろーんな話を聞かせてもらった。
「ごちそうさまぁー なにー?女の子たちで盛り上がっちゃって〜混ぜて混ぜて〜♡」
クロさんが食器を置いてこちらにきて、
わたしの肩に手をかけながらいつもの調子で話しかける。
「ぉあー!黒尾何してんのー!」
「あー、うるせーのきちゃった」
「木兎さん、邪魔しちゃ悪いですよ」
「そーだそーだー
ミミズクヘッドもトサカヘッドも女子会の邪魔しないでくださーい」
「わたしたち最後の合宿なんだからぁ」
「それを言ったら俺たちだって最後の合宿よぉ?
色めく思い出のひとつやふたつ恵んでくれても…」
「あっ穂波ちゃん!約束!」
『あっうん、約束!』
「約束?」
「ハグする約束してんのー。 3種類!」
『…笑 3種類?』
「うん!3種類まで絞った!
まずは、俺が飛び込んでいきたいから、穂波ちゃんがおいでって手ぇ広げて!」
…こういうとこ、いいなぁ。
お兄ちゃんが言ってた通り、やましい感じがないというか。
研磨くんは蛍くんのことは少し気にするけど、
光太郎くんのことはなーにも気にしてないような感じがする。
…あ、いや蛍くんがやましい感じがするって意味じゃないんだけど。
この、明け透けであっけらかんとした感じは、
やっぱり光太郎くんだから、って受け止めれる。
揶揄われてるわけでもなくって、人がいるからやってるわけでもなくって、
このままで光太郎くんだから、わたしもただそのまま受け取れる。
それって、光太郎くんがしてると
なんてことのないことのように見えるというか、
逆に素っ頓狂なことに見られがちかもしれないけど、
わたしはそういうとこにすごく安心するし、いつもかっこいいなぁと思う。