第26章 手のひら
「おーい影山ぁ!なーんか穂波ちゃんが困ってるように見えるけど大丈夫かー?」
菅原さんが向こうから声をかけてくれる
「…なんかしばらく同じとこ伸ばしてる気がするしな」
旭さんの声でハッとする
『わ!ごめん影山くん! ちょっと反対側ももう少し長くやろっか』
「あ、そっすね、はい。喋りすぎました。すんません」
『ううん、お喋りしてくれるのは嬉しいよ。
わたしが器用にできなかっただけで。…よし、気を取り直して』
ストレッチに戻ろう。
「あの、練習外の時間で、俺も穂波さんの身体に触ってもいいっすか?」
『………ぇと、あの、ね。 …ちょっと、待ってね』
プシューーー
菅原「うわぁ!穂波ちゃんがまた!」
澤村「影山ぁ!」
日向「こら!影山何してんだよ!すっげー穂波ちゃんと話してんなぁとは思ったけど」
『あっ ううん!影山くんは、別に…』
影山「俺はただ、穂波さんのからd…」
『あっ…影山くん、言わなくていいよ、それ、ね?」
思わず後ろから影山くんの顔を覗き込んでしまう。
覗き込んで、影山くんにだけは聞こえるように、顔の近くで言った。
…あぁ、顔が …近い
瞳の色も、各パーツの形も… 美しすぎる…
墓穴をほるとはこういうことか。
余計に高鳴ってしまった鼓動を遮るように深呼吸をして話を続ける。
『…んと、わたしね、ここで合宿の時は大体夜、調理室にいる。
それからお風呂に行ってってするんだけど、多分時間合わないかなぁ。
でもわたしのお風呂前でもよければ、全然、付き合います。
お風呂上がってからはきっと、影山くん寝ちゃってるんじゃないかなって思う。
…あ、でも明日はそうでもないかも。今日はわたし一旦抜けるからさ』
「調理室…」
『いつもお皿返しにきてくれるとこだよ。
もし、今ならできそうだなぁって時があれば覗いてみて?
お話もその時にでもしよう。うん。 そうしよう…
勝手にドキドキしちゃって、なかなか変換機能が追いつかない』
「…? じゃあ、そうします」
『うん、じゃあ、よし。 …よし。 ストレッチしよう』
次こそはちゃんと、ストレッチに戻ろう。