第25章 秋刀魚
『…はー、ごめん。 …フゥ もう大丈夫。 …はい、どうぞ』
「………」
『………』
「…ふ 笑」
『…ふふっ 笑』
はい、どうぞ。って言われて、
穂波がさっきまで笑ってた理由が唐突に理解できた。
今からわざわざ、あのくるくるーってやつをしようとしてて、
おれは普通にどうやってするのとか聞いてて、
それって確かに、馬鹿みたいだ。
2人でお腹を押さえながら、
声を出さないように肩を震わせて笑った。
「あーちょっと、馬鹿みたい 笑」
『…ふっ 笑』
「ふははっ 笑」
・
・
・
「…お腹いたいし」
『うんうん、笑ったね。声出さないようにするのって、気合いがいるね』
「…ん。 でも、エッチしてる時よりはずっと抑えれてたよ」
『…それはっ』
「…ふ」
ちゅっと唇に口付けてから穂波の背中に回って帯を解いていく
前はぺたんてしてたけど、今日はリボンみたいに結ばれてる。
「この結び方もかわいいね」
『ね、わたしもすき。これか、前してたのばっかしちゃう』
「あぁ、前のもすっきりしててよかった」
『これはたまてばこっていう結び方なんだよ。解いたら何が起きるかなぁ〜?』
「………」
長さや幅があって慣れなくてちょっと難しかったけど、まぁ普通に解けた。
穂波も解けたのがわかったみたいで、
無言でコクリと頷く
ここで喋ったらまた笑い出しちゃうそうだから
何も言わずに少し距離を取って、ちょっとイメージしてみる。
帯の張り方とか、角度とか…
それから軽く帯を引く。いくよ、の合図というか。
冷静になって状況を俯瞰してみるとだいぶ笑えるけど、やりたいからこっちに集中。
想像したように角度をつけて、
常に帯を張るようにしながらあんまり速くなりすぎないように引いていくと、
穂波はおもしろいくらいに綺麗にくるくると回った。
一回転半くらいしたところで近づいていく。
多分もう、帯が終わると思うから。
最後の半回転、ぐいっと引いてみるとくるんってなって
こっちに倒れ込んできた。 計算通り。
「…やった」
『………』
「…大丈夫?」
目、回ったかな。