第25章 秋刀魚
「いやっちょっとみなさん、話がおかしいですよ!」
犬岡が穂波の表情を見ながら大きな声で言う。
居ても立っても居られないという感じで穂波の隣に駆けつけ、
肩に手を添える。
犬岡がやっても全然嫌な感じしない。
ほんと、穂波と犬岡の安心感、すごい。
「穂波さん、大丈夫っすか?」
『うー… 犬岡くーん』
穂波は安心したのか、なんなのかわかんないけど、
犬岡の腕におでこをあてて、多分、泣き始めた。
「…あー …よしよし、大丈夫ですよ。
ほんとにどちらかの気持ちが離れそうとか、いつかは別れるだろうとか思ってたら、
今みたいな会話って絶対できないですよ。
研磨さんと穂波さんが、思い合ってるのがわかるから、あんな話をできるんですよ。
…ね? ほらほら。 よしよし。 大丈夫、大丈夫」
穂波が犬岡の妹みたいに見えてくる。
犬岡は慣れた様子で頭をぽんぽんしながら穂波をあやしてる。
『…ん みんながどうとか、どう思おうとか関係ないの。
でも、想像したらちょっとショックが大きかったー 研磨くんに愛想尽かされたら…
うわーーーーーん』
「…ちょっとっ みなさんっ 研磨さんっ」
犬岡が慌ててる。
「…笑 いいよ、そのまま、そばにいてあげて。おれ見てたい」
「何言ってんすか研磨さん!」
…笑
「だから、ね? 穂波さん、俺思うんですよ。
ほんと研磨さん、穂波さんのこと大好きなんですよ。一目瞭然なんです」
「…ちょっと犬岡、うるさい」
「いいんです、研磨さんに話してないんで」
「………」
犬岡が強気できた。
泣いてる女の子をわかっててほかってるからかな。
そういうのには厳しいのか?
「今日もアイス屋行く時に、穂波さんのことが好きって俺にですよ?言ってました。
翔陽にも合宿ん時言ってたし… ていうか言う言わないの話じゃないっていうか」
カズ「穂波は研磨が穂波のこと好きなのはちゃんとわかってるでしょ」
「あーそっかぁ そうだよね。 ごめん、声のかけ方おかしかったね」