第5章 夏
石神井公園へ行くことになって、
公園のある駅で待ち合わせた。
「穂波、お待たせ」
『研磨くん、部活お疲れさま』
「…ん。行こっか。鞄持つよ」
『ありがとう。でも、まだ大丈夫。途中重たくなったら、研磨くんのリュックと交換しよ?』
持ってくれる気持ちはすっごく嬉しいし、
素直に受けたい気持ちもあるけど、
それが当たり前になるのも気持ちが悪いし、
交換とか分配するのが私には心地いい。
「…ん。ぉけ」
『ふふふ。ちゃんと重たくなったら正直に言うからね。笑』
「…ん」
途中、研磨くんのリュックとバスケットを交換して公園についた。
野球場近くの芝生に布を敷いて座る。
夏休みだからか平日だけど子供が沢山いて賑やか。
『研磨くんって、人が多いところ苦手?』
「…いや、別に。人が多いのは気にならないかな」
『やっぱ、そっか。なんかそんな感じ。…ふふ。
研磨くんって、切っても切っても研磨くんで、金太郎飴みたい。好き』
「…え、金太郎飴…」
『うん、金太郎飴。安心感すごい』
「…ん。ねぇ、穂波、お弁当食べたい」
『あ、そうだね。食べよ食べよ』
バスケットからお弁当と小皿、箸、水筒を取り出す。
「あ、そうだ。水筒、使ってるよ。慣れてくると、すごく、良い」
そう言って研磨くんは鞄から水筒を出す。
『ほんと?よかった〜。お兄ちゃんにも伝えとこうっと。
お弁当のときはこっちでどうぞ。』
今日はカップ付きの水筒を持ってきた。
カップに冷たい五穀茶を注いで研磨くんに渡す。
「…ん。ありがとう。…あ、おいし」
『ふふ。お弁当、開けるね』