第5章 夏
ー研磨sideー
穂波のお弁当を食べるのが楽しみだった。
お弁当は綺麗に詰められていて、
どれもやっぱり美味しかった。
『初めてお弁当一緒に食べるって思うと、
なんか選択肢が定番の唐揚げ、お稲荷さんだった。笑』
なんでもないことのように笑って言う穂波は本当に綺麗で可愛い。
「お弁当はよく作るの?」
『うちね、高校からは基本お弁当自分で作るってことになってるの』
「…そうなんだ。…すご。お兄さんも?」
『やってみれば慣れるものだよ?
お兄ちゃんは量も量だったし、お母さんが作ってたかな。
たまーにお兄ちゃんが作ってた。たまーにわたしも』
「…穂波のご飯、おれ好き。」
『………っ!ありがとう。
研磨くんのことを想いながら台所に立つ時間、わたしも好き』
「…ん。」
穂波の言葉は真っ直ぐで、言われても恥ずかしさがない。
そのまま受け止めれて、ラクだ。
お弁当は空っぽになって、
そのまますこしのんびり過ごした。
穂波は鼻歌を歌いながら、
走り回る子供達を見たり、空や木を眺めてる。
おれはゲームを取り出して、スイッチを入れる。
この間の虎との会話を思い出す。
虎「研磨はその…彼女といるときも…ゲームしてんだろ?」
研磨「うん。…なんで?」
虎「普通やらねぇだろ。家でとかならまだしも、歩いてる時とか」
研磨「…手繋いでるときとか、やらないときもあるよ」
虎「とぇっ…とぅとぅとぅとぅとぅとぅとぅとぇっ…てって」
研磨「…ちょっと虎、落ち着いてよ」
虎「…か、彼女はなんも言わねぇの?」
研磨「好きにしてて。って。でも、散歩行こう?とか言ったりするよ。」
虎「………」
海「我慢しているわけじゃなくて、一緒にやりたいことがあるときは言ってくれるんだな。
良いじゃん、その感じ」
研磨「…ん」
虎「そーゆーもんっスかねぇ〜 俺だったらいやだな」
研磨「…虎は俺が今ゲームしてるの嫌なの?」
虎「いや、研磨はいいんだよ。…こ、恋人がよ、ゲームばっかしてたらなってこと」
研磨「…ゲームばっか、は…してないけど…」
海「いや、研磨も気にするな。関係性なんて人それぞれだろ。
穂波ちゃんは側から見ても何も気にしてなさそうに見えるぞ?」