第25章 秋刀魚
いろいろを済ませてキッチンに向かう。
カズくんはもうご飯、納豆、味噌汁で決まってるから
そっちも少量作ることになる。
一人分でもいいけど、誰かが食べてたら食べたくなる人もいるかもな、とか。
夜久さんの言う通り文句言う人なんていないのはわかってるけど
作る側の勝手な都合というか。気にかけてしまうとこがあるので、一人分よりは多めに。
昨日いっぱいお酒を飲んだ大人たちの誰かがお味噌汁を欲するかもしれないし。
お米とお水の入った土鍋に火をかけ
昆布と煮干しを一晩つけておいたお出汁を鍋に移す。
パンにはペーストを用意して、好きに食べれるようにしよう。
昨日BBQの網で焼いた茄子で作った焼き茄子とアンチョビのペーストが既にあって。
あとは…
「なにするー?」
『あ、夜久さん。じゃあ茹で卵を…』
「台所にいる穂波ちゃんってほんとかわいいね」
『へっ!』
夜久さんって結構なんでもざくざくっといってく印象があるけど
かわいいとかそういうこと、言われたことない気がする。
こんな風に言われると、夜久さんはただ言っただけなのにどきっとしちゃう。
「あーごめんごめん。いきなり。 …いやでもほんと、かわいい」
『えっわたし今なにもしてない、ただ台所に立ってるだけ』
「うん、でも空気が違う。台所にいる、穂波ちゃんは特にかわいい」
『夜久さんっ、ちょっと…』
「わーごめんごめん、言い出すとつい。茹で卵な!いつも穂波ちゃんはどうやる?」
『あっわたしね、この間教えてもらったやり方があって。やってみてもいい?』
「おー、どうぞ。教えて」
押しピンで卵のてっぺんに穴を開けて、沸騰したお湯に入れて5分〜お好みで。
冷水に晒して。 つるん、と剥けるらしい。
「マジか!穴開けんのな!初めて知った」
『ね、わたしも今これ、半信半疑だよ。笑 楽しいね、実験みたい』
「…だな! やばい、すごいかわいい!顔近い!覗き込まれるとやばい!」
『夜久さん…』
「心の声が全部出ちゃうわ、今日」
『心の声… 嬉しいけど… やだぁ、はずかしい』
「よし!沸いたら卵入れとくな。次はなにする?」
『あ、卵入れるのわたしもやりたい』
「おっけー」