第25章 秋刀魚
『研磨くん、浴衣着る?』
隣の椅子に座って、足をぷらぷらさせながら穂波が言う。
「…え?」
『浴衣、着る?着て欲しいなぁって思ってる』
「…いや、着ない」
『…そぉかー。残念』
「…またなんか、お祭りのある時なら、着る」
『うん!そうだね!なかなか普段着にいきなりはそうだね。わーい。
秋祭り、どこかであったら行こうね』
シュンとした顔も可愛かったけど、
やっぱりぱぁっと花が開いたみたいなこの笑顔がいい。
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みんな食べるの落ち着いて少ししてから
穂波とカズマがアイスを持ってきた。
おれと穂波はクッキーサンドのを食べてみたいけど、
一つは多いから、2人で分けっこして食べる。
シナモンの香りがするクッキーに
りんごのコンポートとバニラビーンズが入ったアイスが挟んであるやつ。
『…あ、美味しい』
「うん、美味しい」
灰羽「ほんと穂波ちゃん家かっこいいね!周平さんのお父さんが設計したって」
『そうそう。周平のお父さんはね、すごいいろいろ手掛けてるんだよ』
灰羽「へぇ、穂波ちゃんもそのうちやっぱこういう家に住みたいの?結婚とかしてから」
『へ?結婚? こういう家って?』
灰羽「なんか、こういう、家!」
『うーん、この家は好き。素材とかオープンな感じとか…
でも、新築にはこだわりはないかなぁ、今のところ。経験してみないとわかんないね、それは』
灰羽「…?」
『古民家とかもいいなぁって思う。リノベーションとかして』
灰羽「あぁ!」
『でもやっぱセルフオーダーの新築のこう、一からできる感じは楽しいだろうなって思うけど。
研磨くんはどう思う?』
研磨「え、おれ?」
『うん。2人でイメージしていきたいなぁって』
夜久「でた、いちゃこら」
周平「…だな」
研磨「…ちょっと、おれ別になにも答えてないし」
クロ「…で、研磨クンはどう思うの?」
研磨「………」
そりゃ、イメージしたりはするけど。
そんなふわふわしたこと、みんなの前で言いたくないし。