第25章 秋刀魚
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『はーい』
玄関のドアを開けた穂波は浴衣を着てた。
…ふいうち。 …かわいいがすぎる。
グレーがかった落ち着いた群青色に白い葡萄と葡萄の葉っぱの柄。
葡萄の実のいくつかは山吹色で、差し色になってる。帯は白。
…なんか、前より落ち着いた感じ。
「わ。浴衣だ。かわいい」
「浴衣!かわいいっす!」
『…ふふ、ありがとう。ささ、どうぞ』
「お邪魔しまーす! うわ、すっげーかっこいい家。ファンがある!薪ストーブある!」
「犬岡うるさい。 …わかるけど、落ち着いて。 …あ、これアイス買ってきた」
『わぁ… わぁ〜 わぁ〜〜』
「………」
よかった。嬉しそうにしてる。わぁ、しか言ってない。笑
『カズくん、こちら犬岡くんだよ。犬岡走くん。犬岡くん、彼はカズくんです』
犬岡「あぁ!この間校門まで来てた。よろしくね」
カズ「…ん」
『カズくん、犬岡くんをさ周平たちのとこまで案内してくれる?鞄とかも置いてもらって』
カズ「…え、やだ」
犬岡「あっ いいっすよ、なんとなくやります!」
『カズくん〜 わたし研磨くんと一緒に向こうの冷凍庫にアイスしまってくるからさ』
カズ「えー…」
研磨「…じゃあ、カズマがアイス持っていって。おれ、犬岡と先行ってる」
カズ「うん」
犬岡「え、あ、なんかすみません。…てか、カズくんって研磨さんのおとう…」
研磨「…ちがうし。 おれ兄弟いない」
犬岡「…そーっすよね。 …でもなんか、似て…あ、いや…なんでもないっす!
さっきもう外ですげーいい匂いしましたよね!楽しみすぎます!腹減ったー!」
鞄を置いて、庭に出るとテントとかタープがあってなんか心地良い感じに空間が出来上がってる。
夜久「お、研磨と犬岡も到着だ」
クロ「犬岡、穂波ちゃんのお父さんに挨拶しとけー」
犬岡「あっ、はい! …えーっと」
研磨「………」
クロ「研磨、そこは君が紹介しに行くとこでしょーが。犬岡困ってる」
研磨「…あー、うん」
シゲさんと話すのは別になにも苦じゃないけど、
なんか紹介するのって、変な感じ。