第5章 夏
玄関を開けると母さんがやってきた。
クロにはしないのに。
「…母さん、……ぇと、おれの…彼女の穂波…………」
やっぱちょっと恥ずかしい。
『はじめまして。運天穂波です。
母の実家のある宮城へ帰省してきて、これ、お土産です。
研磨くんから、魚介がお好きと伺って…』
「まぁ、かわいらしい娘。そんな、堅くならなくっていいよ。
研磨の母です。穂波ちゃん、上がって行って?お土産もありがとう。」
『はい、お邪魔します』
「…あれ、もしかして以前葡萄を持ってきてくれたのも穂波ちゃん?」
『あ、はい。その時にご挨拶できたらって思っていたんですけど、お会いできなくって…』
「いいのいいの。ほんと気を使わないで、ね。葡萄とっても美味しかった………」
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2人が話してる間に麦茶とグラスを用意する。
「穂波、部屋いこう?」
『…あ、うん。ぇと、』
「うん、またゆっくり話そうね」
『はい、じゃあ、お二階お邪魔します…』
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『研磨くんの目は、お母さん譲りなんだね。綺麗な目』
「…ん」
『研磨くん、こっち見て?』
穂波が俺の前に座って
じーっと目を見つめてくる。
…我慢できない。
腕を引き寄せて、キスをする。
穂波は前、穂波の家に泊まった日に着ていたワンピースを着てる。
あの日のことを思い出してしまう。
啄むように何度も角度を変えてキスを交わした。
「…ん、穂波、ゲームする?」
『…ん、したい。けど、夕飯の時間大丈夫?』
「…そか。クロはいつも食べてくけど…」
『…ふふ。クロさんはお隣さん家のクロさんだからっ
また、すぐに会えるから、今日は帰るね。
夏祭りの次の日って、部活はどんな?』
「日曜は、休み。残りの夏休みの間だけ少しスローペース。
9月からきっといつも通り」
『そっか、じゃあゆっくりできるネ。…泊まってくかな?』
「…え、ぁ、んと…クロもいるからな…」
『部屋はあるから…お兄ちゃんの部屋』
「…ん。考えとく」