第24章 かぼちゃ
ー穂波sideー
調理室で笑い転げながらシンクや床の掃除をした。
ツボに入っちゃってもうなんでもおかしっくて、
大鍋のお湯が半分以下になってるのもおかしいし、
沸騰してぼこぼこぼこぼこしてる様も音もおかしい。
湯気で顔や手が蒸されるみたいになるのも、
暑い中沸騰するお湯を覗き込んでるわたしたち自身も、
床拭きしてて見つけた床の傷の形も、
もうなにもかもがおかしくって、京治くんといちいち顔を見合わせて笑った。
これは今からどんな仲の良い人がここに来てくれても共有できないやつで、
笑いのツボに誰かと一緒に入るのってなんていうか、
やろうと思ってもできない、これはこれでちょっと宇宙みたいな感じだ。
床拭きももうすぐ終わる頃、服の毛玉みたいなのが落ちてるのを見つけた。
手を伸ばすと、手伝ってくれてる京治くんの指とわたしの指が重なった。
「………」
『………』
「…ふっ 笑」
『…ははっ 笑』
もうなんでもおかしい。箸が転げても、ってやつだ。
わたしたちの出会いってこれだったね、って言おうとしたら
京治くんも俺たちの出会いって…って同じタイミングで言うし、
もう普段ならただそのまま進んでいく会話や流れが、
なぜか今は、うねってうねって笑いに変わってしまう。
「おーい、終わったかぁ? …ってどこで笑い転げてんだ?」
クロさんの声がする。
『あっ 笑 クロさんッ …もうっ …フゥ- もう終わります!』
「あいよー じゃあ10分後には来いよー」
クロさんはそれだけ言うと去っていった。
『はぁ、今日は笑いに始まり笑いに終わる日だったね』
「だね、こんなに笑ったの初めて」
『ほんと?…こういうの、たまに思い出すと一人で吹き出しちゃう時あるから気をつけてね 笑』
「………」
『わたしたち似たとこあるから、きっと京治くんも』
「…うん、気をつけるよ」
『…笑 よし。じゃあ終わりにしよっか。京治くん、手伝ってくれてありがとう。楽しかった』
「うん、俺も楽しかった。ありがとう」
『…ん!じゃあ、行きましょう』
鍋を拭いて片付けて、
雑巾を受けとって外の水道で洗って干しておく。
夏の合宿も終わり。
夏休みも、もう終わる。