第24章 かぼちゃ
ー研磨sideー
「…なんか調理室でツボに入ってたな」
駅に向かう道すがら、クロが穂波に話題を振る。
『…へ?笑 あーだめ、まだその話はまたぶり返しそうになる』
クロ「…そっか、わりぃ。研磨、ツボに入るってわかる?」
研磨「…は? わかるし、そんなこと」
クロ「いや、言葉の意味とかじゃなくって」
研磨「…一回、ある」
『…ぶっ 笑 あったよね、そっかクロさんに言ってなかった』
クロ「マジかよ、研磨、そっちも穂波ちゃんと経験済み?」
研磨「…クロ、言い方」
『ちょっと今日だめだぁ…思い出したらおかしくなってきちゃった。 あはは…笑』
クロ「…何を?今日のはいいにしても、研磨との聞きたいし」
研磨「…ふ 笑」
クロ「まーこう言うのは、当事者にしかわかんねぇことが大抵だもんな。
にしても、研磨も赤葦も笑い転げるなんて想像つかねぇのにな。
穂波ちゃんのトリックだな」
『…いや、もうそういうんじゃなくって。ああいうのはもうある意味ミラクルだよね』
研磨「…ふははっ 笑」
クロ「 ! 」
研磨「…ダメだ、思い出した。 …あー 笑」
もうずいぶん前のことなのに。
去年のクリスマスに穂波の小さいころのアルバムみててツボに入ったあの時間。
思い出すとおかしい。
あの時とおんなじ可笑しさと、
今はあの時の様子を俯瞰してみた感じの可笑しさが加わって
なんなら一層おかしい。炭酸でむせたことすらおかしい。
クロ「…笑 やべ、引き金ひいちまった」
しばらく、おれと穂波は襲ってくる笑いのうねりに耐えたり、
耐えれず吹き出したりして過ごした。
会話すると多分もう無理だから、無言で。
電車に乗って10分くらいのとこで、2人とも落ち着いた。
クロ「お。落ち着いた?」
『うん。お待たせ』
研磨「…はぁ 疲れた」
電車で寝ようって思ってたのに、寝そびれた。
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それから穂波の降りる駅でわかれた。
始業式の日は朝練ないから一緒の電車で行くことに。
ただそれだけの約束をして。
きちきちしてなくて、いろんなことがゆるっと進んでいくのは心地いい。