第24章 かぼちゃ
ー穂波sideー
今日は夜久さんが好きだという野菜炒めも作ってみた。
唐揚げと野菜炒め、どちらも食べる前に作るものだから、
なかなかわたわたとしたけど、せっかく知ってる好きな食べ物を作りたいなと思った。
今まで、敢えて避けてきたのだけどチャレンジしてみたのはレベル上げ的な。
ちょっとやってみようかな、的な。
最終日の昼食だから配膳ができて食べてる顔も見れるし嬉しい。
犬岡くんは山盛りの唐揚げとごはんを平らげて、おかわりにきた。
「穂波さんの唐揚げ美味しいっす!さくってしてじゅわーって!」
さくっとしてじゅわーってできてたかぁ。よかったよかった。
『うん、ありがとう。わたしだけじゃなくて、マネみんなね』
この数の唐揚げと炒め物を食べる直前に仕上げるのは
当たり前だけど一人でなんてできることではない。
「あっ そーですよねっ すみません!」
『ううん、謝るとこじゃないよ。笑 こっちこそごめん。
犬岡くんの気持ちと言葉はしっかり受け取った上で事実を言っただけ』
「…あ、はい。 マネの皆さんありがとうございます!!!」
犬岡くんは一歩下がって一礼しながら、大きな声ではっきりとそう言った。
まるで試合後の挨拶のように。
部屋の中が静まりかえる。
黒尾「おいおい犬岡、いきなり締めに入ったのか〜?」
犬岡「あっいや、黒尾さん、俺そんなつもりじゃ!」
「いつもうめーっす!」「いつもありがとうございます!」「笑顔に癒されてます!」
さまざまな机からマネージャーへの感謝の言葉が飛び交う。
食事だけじゃなくて、合宿だけじゃなくて、
常日頃毎日、マネージャーの皆さんがしてることに対して、
溢れてきたというような具合だ。
英里さんと仁花ちゃんは目に涙を浮かべてる。
犬岡くんとわたしは顔を見合わせて笑った。
あぁ、許されるのならこのまま弟として家に連れて帰りたい。
それほどに素直で可愛い犬岡くん。
「野菜炒め、すっげーうまい!!」
感謝の言葉の渦が落ち着いた頃に夜久さんの声が響く。
日頃のマネ業務全般的なことへの気持ちが部屋中に溢れてた中、
夜久さんへの野菜炒め愛が高らかに主張されて空気が変わる。