第24章 かぼちゃ
ー赤葦sideー
『そうだ、京治くん』
下から覗き込むようにして俺の目を見ながら話しかけられる。
…かわいらしい。ほんとに。
「…ん?」
『アルプス一万尺、できる?』
「え?」
『小学生の頃とかやった?手遊び』
「…あぁ、どうだろ。覚えてるかな」
『ちょっとやってみない?』
「え、あ、うん。わかった」
ものすごく唐突だな…
向かい合って座り、ゆっくりとしたリズムで思い出すようにやった。
一人っ子だし、幼いころにもやった記憶はあまりないが、それでもなんとなく覚えていた。
…予想外に穂波ちゃんに触れることができて嬉しいし、
きゃっきゃっと屈託なく笑う穂波ちゃんにつられて俺も笑ってしまう。
『ちょっと速くしようよ』
『あははは… 笑 間違えたぁ〜 京治くん慣れてきたら全然間違えないねぇ』
『もう一回やろ!』
あぐらをかいている俺の太ももや膝に手を添えて笑ったり、悔しがったりする。
何でもないことのように俺に触れてくれるけど、
俺は触れられたところがじーんと熱くなる。
鼓動が速くなるのがわかる。
何度も何度もやった。速度を何段階かあげて。
失敗することもおかしいし、
速度をあげると歌の方がおかしくなったりしてそれがまた滑稽に思えて、
最終的には2人で笑い転げてしまった。
こんなに笑ったのは… 初めてかもしれない。
『あはは…おっかしいね… あーお腹痛い』
「…あぁ、ほんとお腹痛いね」
『ひぃー… 笑』
2人向き合ったままで、芝生に寝転がっている。
…何だろ、この感じ。
立ったり座ったりして見つめ合うのとは、ちょっと…違う。
いや、ちょっとどころじゃない。
「………」
『………』
笑いの波みたいなものが落ち着き、
ふと沈黙が流れる。目を、見つめ合いながら。
まずい、沈黙をやぶらないと…
身体が勝手に動いてしまいそうだ…