第24章 かぼちゃ
・
・
・
りんごジュースを飲み終えて、銭湯を後にする。
当たり前のように手を繋いで歩いてくれるけど…
意識されてないの?とか思ったり。
…でもそういうわけでもなさそうだし、よくわからない。
まぁ、手を繋いで歩けるのは僕には得しかないから何でもいい。
『ねぇ、蛍くん。答えたくなかったら答えなくっていいんだけど…』
「…」
『蛍くんは大好きだった人に
大好きな気持ちをそのまま表現して傷ついたりしたことがあるの?』
「…」
大好きな気持ちをそのまま表現して…
傷ついた?
「…いや、ない」
『…そっか、勘違い。ふふ、ごめんね』
「なんで、そんなこと思ったの?」
『…んーと、蛍くんって真っ直ぐな人だなぁって思うの。好きな気持ちにも嫌だなって気持ちにも。
でも、それと同時に閉ざしたようなところとか、自分を抑えてたというか…
いまはちょっと違う感じするけど、出会った頃はそんな感じ強くがした。だから、んー、なんとなく。
ごめんごめん、勝手な憶測しちゃって。 …蛍くんのこともっと知りたいなって思ってしまって』
「…」
『…月、これから満ちてくね。今、ちょうど半分くらいだね』
「…勝手に思い込んで、想いを押し付けて、相手を追い込んだことはある」
『…』
「あ、恋愛じゃないよ。兄貴の話」
『…ん』
「でも、まぁそれはもう。終わったことかな」
『…ん。お兄さんと久々に話したって言ってたね」
「そうだね、それもまた勝手に僕が、兄貴を避けてただけだから」
『…』
「ぐだぐだやらない理由考えて、かっこわる。って思ったりして。まぁ、今に至る」
だいぶ端折ってるけど。
詳しく聞いてきたりはしないんだな。
『…やっぱり』
「やっぱり?」
『蛍くんは、優しい人。痛みを知ってる人。好きだよ、蛍くん』
「はっ? ちょっとやめてくれる?」
『あ、ごめん…』
「…」
好きだよ、ってすごい普通にいうけど。
僕がいうのとは違うんでしょ。
I like itくらいのニュアンスなんだろ。
彼氏のことが大好きなこの人を好きになって好きと伝えて、
それでも仲良くしていたいと思って、そして現状にわりと今のところ満足してる。
そりゃもっと触れたいけど。
その感覚が鈍ってく。満足できなくなる。