第24章 かぼちゃ
ー穂波sideー
蛍くんと、他愛ない話をいろいろした。
共通して好きなバンドの、特に好きな曲、アルバム…
他にどんな音楽を聴くのか、好きな映画。
いろいろ いろいろ。
やっぱり男女関係なく、一対一で人と関わるのが好きだなぁ、と思う。
わたしの好きな人は研磨くんだけど、
蛍くんとは蛍くんとの会話や空気感があり、
京治くんとは京治くんとのそれがある。
そのどれもが心地よくて、どれもかけがえのない時間。
許されるかぎり、
ひとを傷付けないのなら、
蛍くんみたいに好き、って言ってくれる相手だとしてもその時間は大切にしたいなと思う。
立ち上がって、もう火を止めてある煮物の温度を確かめる。
『まだ熱いや。お豆腐だけ水切りしてからお風呂行こうかな。
お風呂のあと、冷蔵庫にいれにくる。蛍くん、お手伝いしてくれてありがとう。
お喋りする時間をくれてありがとう。あっという間に時が過ぎたよ、あり…』
いつの間にか椅子から立ち上がってわたしのそばに来ていた蛍くんが、
肩に手を添え腰をかがめてほっぺにちゅっと口付けた。
「…一度ありがとうって言い出すと、ほんと延々言い出すよね」
『…へっ 蛍くん、今っ』
「ほっぺくらいなら動揺しないかなと」
『いひゃいひゃ…どうようしてます』
「いひゃいひゃ?笑 いやいやってこと?笑」
『………』
「…ありがとう連発もかわいいけど、その分一回キスしてくれればいいのに」
『こら!からかわないの!』
「…笑 からかってないけど。それが水切りってやつなの?」
バットと同じ形をしたザルにキッチンペーパーをしいて
そこにお豆腐を並べていってるのを見ながら蛍くんが言う。