第5章 夏
それから別れるまで夜久くんはテンション高めで戯れてきて、
うるさかった。意味わかんない。
ま、質問一つで終わったから良いや。
「夜っ久んはさぁ、嬉しかったんだと思うよ」
電車の中でクロが言った。
「…なにが」
「研磨がBBQ誘ってくれたこと」
「…なにそれ」
「質問だって、拍子抜けだっただろ?晩飯何って」
「………」
「今まで最低限の話しかしなかっただろ。今もだけど。
なんつーの、少し研磨と距離が近くなった気がしたんじゃねぇの。
話す気のない下衆なこと聞く気はなくてさ、
ふつーに、穂波ちゃんとのこと、なんか質問して研磨が答えるっていう
その図だけで満足だったんじゃね」
「………」
「…いい奴だよな」
「……ん」
「研磨ちゃんは、ちゃあんと夜久パイセンにお礼言えたのかな〜〜?」
「…言った。昨日」
「…お、えらいえらい。えらかったね〜」
「…ちょっと。やめてよ」
「練習試合、穂波ちゃんこれねぇんだっけ」
「うん。おばあちゃん家だって」
「…残念だな」
「…別に。観に来て欲しいとかないから」
「…だろうな」
「…今年はダメでも、来年はいいとこまで行ける気がする。
でも、他のチームも新しい人員が入ってきてどうかな…わかんないけど」
「………今年はだめなんだ?」
「…んー」
「ま、だからって手、抜くなよ?」
研磨「ん」
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穂波は明日から宮城。
おれは別にいつもと一緒。
ただすこし、穂波に触りたい。