第23章 high
ー赤葦sideー
音駒での合宿前日は半日練習で、
部活を終えて帰るとテーブルの上にまた葉書が置いてあった。
絵というか、色というか…
綺麗な色彩の油絵がプリントしてある葉書だった。
ピンク、オレンジ、青。
朝焼けの空のようだな、と思う。
日本の普通ハガキより一回り大きなそれはエアメールであることは明らかで、
…というかそうでなくとも、差出人は見るまでもなくわかる。
【京治くん、やっほー。
綺麗な葉書を見つけたこと、そしてなんと!なんとなんとな出来事があり、
2通目の葉書を書こうとペンをとっています。
先日、夕方タヒチアンダンスのクラスを終えて、
地元の子達と帰路を歩いていると、散歩中の日本人女性とすれ違いました。
すれ違うちょっと手前でお互いの目を合わせて会釈をしたのですが、
なんと!なんとなんと!○○さんだったの!
初めてお会いしたけど、すごーい興奮と共に妙な安心感を覚えました。
その日の夕飯、それから昨日のランチを一緒に食べました。
こっちを発つ前にもう1度食事を一緒にすることになっています。
京治くんのお話もしたよ。あぁ、早く京治くんに会いたい!
でも会う前にこの想いをどこかに吐き出したくって葉書をしたためました。
合宿前に届くかなぁ? では、また! 愛を込めて、穂波】
思わず笑みが溢れる。
すぐそこで話をしてる絵が浮かぶ。
表情、身振り、手振り。
愛おしい姿がいとも簡単に思い描ける。
○○さんというのは、俺が東京駅で穂波ちゃんからもらった本の著者だ。
世界的にもファンの多い女性作家で
海外旅行の経験も豊富でエッセーや作中にそのエッセンスはふんだんに散りばめられている。
長期合宿後、同じ著者のエッセーを一冊読んだ。
穂波ちゃんが大好きというだけあって、
やはり、読んだ文章が穂波ちゃんの一部になってるのだろう。
その著者の作品を読むと穂波ちゃんを近くに感じることができる。
やはり、本というのは偉大だ。
図り知れない力を持っているな、と思う。
早く俺に会いたい、か…
俺も会いたい。