第23章 high
ー月島sideー
8月11日(土)
春高一次予選
ラインで何度か電話したいなーなんて言ってたら、
昨日、とうとう【蛍くんがいいときに電話頂戴◎】ってきた。
試合の日の朝に電話ができるなんて、ちょうどいい。
ビーチにいるらしい穂波さんの周りからは
ざわざわといろんな音がする。
「…タヒチってフランス語?」
『うん、タヒチ語とね。でもここはツアー会場だから英語も多いかな』
「へぇ… 穂波さん、今水着ですか?」
『…ん?水着の上に服着てるよ。こういうとこに来ると基本、そんな感じ』
「へぇ。見たいなー」
『…蛍くん、からかわないでー』
「僕、今日試合なんだけどなー 激励の写真とかないのかなー」
『そういうのはやってません! …でも、いっぱい想ってるね。いい試合になりますように』
ちょっとからかっただけなんだけど、
こんな風に予想外に落ち着かされてしまう。
「あぁ、うん。じゃあ、また結果送る」
『うん!結果もだし、お話もまた聞かせてほしいな』
「…うん、また時間が合う時に。じゃあそろそろ…」
『うん。 蛍くん、いってらっしゃい』
「………。 あぁ、行ってきます」
『…ん!』
切る前ににまた、好きですとか付け加えてからかおうと思ってたんだけどな、
行ってらっしゃいが予想外に馬鹿みたいに嬉しくて、
それに行ってきますと答えれることに舞い上がって、タイミングを逃した。