第23章 high
今のもっかい歌って、と言われもう一回歌った。
研磨くんのお父さんが好きだという曲。
僕たちの家はすっごくいいんだ、君がいれば何もかもがうまくいく。みたいな。
日々の家の中での何でもないことをすごく愛おしく歌ってる曲。
こんな曲を好きで家で流すお父さんって…
きゅんきゅんしちゃう。
お母さんはお母さんであっさりしてそうなのがまたいい。
歌い終えると研磨くんはすやすやと寝息を立てて寝てた。
かわいい。歌ってって言って、歌ってる間に寝るなんてまるで…
今日のいろんなお願い事も声のトーンや表情が何も変わらないのがいい。
これで猫撫で声とか、妙に甘えた素振りだと違和感があるかもしれないけど…
いつも通りの調子で、いつもと違うお願い事をしてきた今日の研磨くん。
とってもかわいかった。
ーヴッヴッヴッー
ギターをスタンドに立てて
少しヨガをしてから寝ようと思ったとこで
携帯に着信が入る
相手はクロさん。
『はい、もしもし』
「あ、穂波ちゃんまだ起きてた?」
『うん、起きてるよ。どうした?』
「いや、穂波ちゃんの声が聞きたくなって…」
『…クロさん、冗談でもドキッとするからやめて』
電話越しにあの声で、そういうトーンで言われると…
「…俺にももっとドキッとしていいんですよ〜 あの、さ。
研磨どう?おばちゃんから聞いたんだけど」
『あ、研磨くん。 さっき研磨くんのお母さんには電話したけど、まだね、熱は下がってないよ。
でもなんか、妙に元気なんだ。 本人は熱ハイって言ってた。こんなの初めてって』
「…熱ハイ。 研磨が。 それは、仰天ニュースだな」
『明日には熱下がってるって言ってたけど、まだわからないなぁと』
「あ、それでさ、風邪じゃねぇけど、
疲れから来てるわけだし明日は研磨休ませて明後日から万全で来させてもらえれば、と」
『あ、うん。わかった。あれ、明日もうちに泊まってって良いのかな?』
「おばちゃんはもうその気満々だったけども」
『そっか。うん、じゃあそうさせてもらいます』
「うん、じゃあよろしく〜 …このままちょっと話す?」
『へっ?あ、うん。それもいいね、なんか、新鮮』