第5章 夏
『ねぇ、クロさん。…研磨くんって今まで彼女、いた事ないん…だよね?』
「? おぉ、まぁ、ないわな。……………上手かった?」
『…! ん、ん? んー、…うん』
研磨くんが言っていたことを疑ってるわけじゃないんだけど、
初めての一回で知り尽くされたような…
攻略されたような感じがあった。
「…想像はつくわけよ。…あ、変な意味じゃなくてね。具体的な想像はしてねぇよ?」
『…そっかぁ』
「穂波ちゃんはまだ試合観たことないもんな。
言ってる意味、観たらわかるんじゃねぇかな。
でもまぁあいつ、そんな楽しそうにはバレーやらないからさ。
そこに楽しいとか、気持ちいいとか、終わらせたくないとか
そういう感情?感覚?が伴ったら、もっとすげーと思うのよね」
『………ほぉ。』
「…ほぉ、って。笑
まぁ、俺は穂波ちゃんといるときの研磨みてんの楽しいわ。
なんか知ってる研磨のままなんだけど、知らない研磨がいるんだよな。
ありがとね。」
『…ん。それはわたしも、クロさんにいつも思ってる。
なんなら私が研磨くんに出会う前のクロさんにも言いたい。
クロさん、いつもありがとう。』
「…ん。ま、これからもよろしく、ってことで。
お、次だわ、研磨起こしてやって」
『…そだね』
研磨くんの大事な人とこうやって親しくなっていけるのは、
すごく、すごく幸せなことだとしみじみと思った。