第5章 夏
ー穂波sideー
電車の中でゲームを持ったまま研磨くんは寝た。
部活のあと家に来てくれて…
それからまた部活へ行ったのだものな…
疲れたよね、と思うと同時にその寝顔の愛らしさにキュンとする。
ゲームを落としちゃいけないから、
そっと取って研磨くんの鞄の中に入れておいた。
クロさんと2人で話したことってあまりなくて、
つい共通の大事な人である研磨くんの話題にしちゃいそうになるけど、
クロさんのことを知りたいと思っていろいろ聞いた。
バレーボールのこと、からすのこうこうのこと、
進路のこと、恋愛のこと
監督の猫又さんは、やはり慕われているようだった。
すごく暖かな眼差しで選手たちをみておられたな…と思い出す。
猫又さんと縁がある方が、当時の烏野高校の監督をされていたようで、
その監督が引退されてからは疎遠になっているという。
もう一度「ゴミ捨て場の決戦」というものを実現できたらなぁとは心のどこかで思っていると言っていた。
そのためには音駒も烏野も強くなって、全国の舞台に行かないといけない、と。
自分たちにできるのは、上手くなって試合に勝つこと、それだけなんだけど…って。
研磨くんはこんな風に熱を持った言葉を話さないし、
バレーのこともこんな風にはお話しないので、聞けてよかった。
もともと、一対一で話したりして、
その人のことを知っていくのが好きなのでとても良い時間だった。
恋愛については、ちょっと前に彼女とお別れした、と言っていた。
「研磨が分からなくなって分かり易いのがよくなったら俺のとこにおいで♡」なんて、
話を茶化すので、その彼女のこと大事に想ってるんだな、と思った。
未練とかそういうのがあるかは分からないけど、
別れる時のことも含めて一緒にいた時間を大事に想ってる気持ちを感じた。
素敵な人だな。さすが研磨くんのそばにずっと居る人。
すこし気になっていた事を、聞いてみる。