第1章 出会い
ー研磨sideー
朝練が終わって、教室に向かってたら運天さんをみつけた。
気付いたらすこし早足になってた。
それから、たぶん生まれて初めて自分から挨拶をした。
部活では、先輩に挨拶をしろと言われてしているけれど、
それとは別だ。しかも意思もなにも、考えないうちに挨拶をしてた。
『研磨くん!おはよう!』
運天さんの笑った顔は
太陽みたいな、大きな花みたいな。
やっぱりあったかい。
運天さんは、朝遅れてくることもある。
髪が濡れてることもある。
だからいつもくる時間が違うのわかってて、いつもくる時間を聞いた。
『うーん、電車乗り遅れたり乗り過ごしたり、たまに早く乗りたくなったりで、
なんかいろいろまちまちかも。
そうだ、名前でいいよ。穂波でもなみでも。
まぁ名字でも、研磨くんがいいように呼んで!』
女子のこと名字以外で呼んだことない。
はずかしいな。いきなり、呼び方かえるのとか。
でも、呼んでみたい。
「…穂波さんは、何か運動をしてるの?」
『わたし?なにしてると思う〜?』
え…
質問に質問で返された。
おれ、無口だし、多分、みんなおれが喋るの苦手なのわかるから、
こういう、会話って、バレー部の数人とたまにあるくらいで、
ほとんど、ない。
なんだろう。
部活やってるならテニスとか、ハンドボールとか。
思ったけど。
身体の線が綺麗だから、水泳かな。
黙り込んで考えてるうちに、教室に着いちゃった。
穂波さんは入ってすぐの席だから、
どうしよう。
このまま自分の席にいくのがいっか。
そう思って歩き続けたら、
後ろから手首をやんわり掴まれた。
やっぱりこの子、所作が綺麗。
品があるっていうのとはまた違って、
いや品がないわけではないんだけど、
なんか、綺麗なんだ。一つ一つの動きが。
穂波さんがおれの目をみて言った
『研磨くん、フラとねサーフィンだよ。
変な問題出しちゃってごめんー笑』
「…あ、そっか。ロコガ「はーい、みんな席につけー」…またね…」
担任の先生が来て、自分の席についた。