第8章 私という存在
医師の診察からさらに一日寝て、スッキリとした頭で目が覚めた。
心の奥深くにはまだ黒いものが蠢いているが、影響されるほどではなかった。
「やぁジル、時間空いたときに来てくれる?」
『っ!了解しました、直ぐ行きますっ!』
「え、後で…《がちゃっ》…まぁいいか」
なにか慌てた様子で、ジルらしくない切り方をされた電伝虫に首をかしげる。
あまり食べてなかったお腹は限界だから、ジルが来たら話ながらごはん食べに行こう。
「失礼します!」
ノックと同時に開けられた扉には少し呼吸を乱したジルがいた。
初めて見るジルの様子に珍しいなぁなんて考えた。
「は、早いね…」
「いえ!それで…ご気分はいかがですか?」
「概ね良好だよ!迷惑かけたね。ありがとう」
「…っ」
感謝の意味を込めて笑いかけながらお礼を述べると、きゅっと唇を固く閉じたジル。
そしてよかったです、と小さく呟いた。
「お腹すきませんか?コックに貴女が起きたこと伝えてあるので用意していると思いますよ」
「出来る男だねぇ…」
直ぐにシャキッといつもの表情に戻ったジルは、完璧にクロエの腹具合を予測していた。
部屋に来る道すがらコックに連絡をいれていたようで、やっぱりジルがいて良かったと思う。
「よし、じゃぁ一緒にご飯行こう!」
「えぇ。ご一緒させていただきます」