第8章 私という存在
ジルと別れ、医師に診察されて戦闘にならなければ仕事できると言われて仕方なく執務室で溜まりまくった書類と格闘する。
事務作業は相変わらず苦手だが、ジルが完璧にまとめた書類にただただ押印するだけの作業は考えを纏めるのに適した時間だった。
一度寝て整理された頭には、自分に関していくつかの事実が追加された。
私は前世だけではなく、はるか昔…それこそポーネグリフが作られた頃に遡れるくらい昔から転生を繰り返していたということ。
そしてこの世に数個存在が確認されている古代兵器を覚醒させ強制的に操れる、ということ。
これがあの老人のいう世界を滅ぼす力なのだろう。
確かにこれが事実ならヤバすぎだ。
だが実際のところ前世以前の記憶もなければ、古代兵器を覚醒させる知識もない。古代文字すら読めない。
ただそういう存在だということが今回の発見だった。
それにしても夢に出てきた自分はなかなかに危ないやつだった。
過去に危険な思考の者を捕らえてきたけれど、あれはその比ではない。
それこそ何百年分も溜め込んできた憎悪だ。
そんなやつに貴女は私とか言われたくない。
(は~…重っ)
平和に海軍やって、適当なところで転職して海賊になって、裏切りものーとか言われながら逃げ回って、
ローたちと共に海を旅して…
ほのぼの人生プランに墨をぶちまけられた気分だ。
果たして思い出した方がいいのか、思い出さない方がいいのか。
夢の私も言っていたが、切っ掛けとなったのはポーネグリフだ。
あれに触れた途端気を失う程に情報が頭に流れ込んできたのだから。
そうそう御目にかかることはない代物だが、今後は注意しなければ。