第23章 ハートの新人、初陣
あっという間に敵船へと降り立ったクロエは深く息を吐く。
夜中の散歩と称して浮上しているときは自船の周りを巡った。
その時は余裕をもって月歩でまわれたが、ここまではかなり体力を消耗したようで、少し息がきれた。
「こいつ、元海軍中将のクロエだぞ!」
「いま、ハートの海賊団から来たよな?」
顔を見て、船を見て、そしてツナギを見る。
そう、私は海軍中将ではない。ハートの海賊団のクルー。
「ごきげんよう。ハートの海賊団のクロエだ。お前らの首と金品を奪いにきた」
宣言。
海兵としての私とは決別だ。
海賊としての私を皆に認識してもらうための生け贄となってもらおう。
「海賊に落ちてきたか、闘神ッ」
船長で億越えの賞金首だろう男が不思議な玉を手に持ち、迫ってきた。
見聞色で見えていたから、飛び上がってなんなく避ける。
ついでに背を嵐脚で斬りつけてやれば危なげに甲板の柵に突っ込んだ。
「今のも避けられないような軟弱が億の賞金首か…ブランニューの査定も狂ってきたんじゃないか?」
厄介なのは能力で、それに応じた金額なのか。
喰らわなければなんてことない男だ。
「それじゃぁ私の練習台でも担ってもらおうか…」
全力戦闘なんてしなくても勝てそうな相手。
もちろん甘く見たりはしないが、一度受けた拳から相手の戦闘力を計ったから間違いないだろう。
手下も集めて四方から飛びかかってくる男どもを見やり、激しい戦闘の空気に血が騒いだ。