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【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第8章 私という存在


ジルは扉を開けてから盛大に溜め息を付いた。
それはもう見事な溜め息で、付き添っていた医師が少し身を引くほどの怒気が込められていた。

「また出直しますねジルさん」
「すみません、後程連絡します」

溜め息とは対照的に柔らかく医師に返された笑み。
だが振り返り室内を見渡した顔には怒りが込められていた。

「まったく、あの人はっ!!」

からっぽのベッドは冷たく、自分が退室したすぐ後に出たことが分かる。
まだ安静が必要なのに言うことをまったく聞かない上司に疲労感が押し寄せてきた。

これから艦内中を探さねばならない。

「あ、艦内放送お願いできますか?クロエ中将を執務室に呼び戻してください」

放送を担当する部屋に内線を掛ける。
これで出てこないようならば、どこかで倒れているかもしれない。
それほど体調は良くないのだ、あの人は。









「出てこないっすね、クロエ中将…」

側に控えていた部下がジルを労るようにコーヒーを差し出す。
クロエの執務室のソファに腰かけるジルは、時間を確認した。

「少し遅いですね。呼び出しで出てこないのは気になりますから探しましょう。人集めて貰えますか?」
「了解しました」

倒れている、もしくは船を降りたか。
部屋を見れば外出用のコートやブーツが置きっぱなしなため船を降りた様子はない。
ならば倒れている可能性が高い。

「見つけたら医務室に監禁しなければダメてすね」

自分も探すために執務室を出た。
食事やシャワーなど思い当たるが、なによりもまず今回の任務の成果を確認するのではと思い、一人貨物室へと向かう。
冷えた地下層に降りていき、貨物室へ入った。

「クロエ中将ー!」

声を張り上げて広い室内を見て回る。
最後、奥に設置されたポーネグリフにたどり着くと掛けられていたはずの布は取り払われ、その布が丸まって落ちている傍に人影が見えた。

「クロエ中将っ!!」

駆け寄り脈を確認する。…生きている。
安堵のため息を付くとクロエを抱き起こして自分のコートを体に被せる。
どれくらい時間がたっているのかわからないが、コンクリートに横たわっていたせいか、体が冷たい。

暖まるように抱き寄せたジルは、艦内用の小型電伝虫で医師に助けを求めた。


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