第8章 私という存在
「あれクロエ中将、もう出歩いていいんですか」
「しー。ちょっと石見に行くだけだから」
「ジルさん厨房の辺りに居ましたよ。みつからないといいですね」
「あはは、ありがと」
こそこそと艦内を移動してれば部下が笑う。
ジルから隠れて移動してるのがまる分かりなのか助言までいただいた。
医師とジルを避けるように遠回りしながら貨物室へとたどりく。
色々な物資が積み込まれているなか、奥にポーネグリフはあった。
(でっか…)
布を掛けられて固定されているそれは見上げるほど大きい。
世に数個しかないと言われるロード・ポーネグリフではなかったようだが無事任務を終えて良かった。
ちゃんと確認しておこうと覆っていた布を剥ぎ取る。
滑るように落ちた布から出てきたポーネグリフに息をのんだ。
遥か昔からあるものには不思議と圧倒される。
美しささえ感じられるそれに無意識に手を伸ばした。
指先がポーネグリフに触れた瞬間だった。
―――私がこの力で支配する
―――この世など滅んでしまえ
―――力なんていらない
―――何故追ってくる
―――古代兵器なんて、くれてやる
―――私に構うなっ
―――誰か、たすけて
焼けるような頭痛とフラッシュバックする映像。
流れ込んでくる怒り、悲しみ、絶望、哀願の感情。
フラッシュバックの終わりと共に意識が途切れた。