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【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第8章 私という存在


「この機会を逃してはならん。向こうからこちらに飛び込んで来てくれるとは、まさに導きによるものよ」
「本当に、クロエというやつで間違いないのでしょうか。海軍が知らないとは…」
「本人が覚醒しておらんのだ。故に海軍も知る由もない」

(なんの、話だ…?覚醒?)

自分に関する何かを知っているような口振り。
前世の記憶があることに関係があるのだろうか。
捉えて尋問しようかと考えていると、懐の電伝虫がなる。
素早く取ると先ほど別れた部下達で、連れ去られたもの達を発見したとの事。皆縛られ適当に檻に放り込まれていたようだ。
もう一方の集落に向かった班も同様に、そちらでも見つけたらしい。
行方不明になっていたもの達のリストと照らし合わせて全員が無事発見できたと言う。

「じゃぁジル達が石見つけてくる間に、ちゃちゃっと回収しよう。戦闘になっても討伐よりは全員の帰還を目的にしてね」
『了解しました。救出開始します』

遠くのほうて騒がしく人が動く音がしはじめる。
祭壇にいる先程のふたりも騒ぎに気付き、手下らしき男は足早にそちらへ駆けていった。

(いまがチャンスだな)

いまだ動かず祭壇を向いている老人の背後に一瞬でまわり、その首筋にナイフを当てた。

「こんばんはご老人。私を知っているの?」

ピクリと体が震えたが、その後は堂々とした態度で此方を振り返る。
ナイフが首に擦れようとお構いなしだ。

「海軍のクロエか。よう来たのぉ」
「私の何が儀式に必要なの?教えて貰える?」
「ふん。わかってはいたが…本当に記憶がないのだな。哀れな」

近づいて気付いた、その老人が手に持つ小さな本。
それをひらひらと目の前に翳しながら老人は笑う。

「世界を滅ぼす悪鬼よ。ここで我らと共に滅びよ。
この時代に生きていてはならん。時が経ち姿かたちが変わろうとも魂のカタチは変わらぬ。お前は存在してはならんのだ」
「……」
「儀式に必要なのはお主よ。その命を散らせ」

老人とは思えない速度で放たれる短剣。
確実に首を落とすつもりで狙ったそれを間一髪で避けて後退する。

「私の何が世界を滅ぼすんだ」
「その存在よ」
「意味がわからん」
「知らぬままでいい」
「理由もわからず殺されてたまるか!」

次々と放たれる攻撃は受け流すのは容易いがなかなかに反撃の余地を与えてくれない。

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