第8章 私という存在
自分の荒い息で目が覚める。
なんて夢を見たんだ。
「前世の記憶…なんで今頃…」
前の私の生涯。
終わりはなんとも不幸なカタチだった。
「なんだ…霧?」
夢でも霧が…
怪しい雰囲気に急いで船内電伝虫を取る。
いつもなら数コールで出るジルが全く応答しない。
自室を出て船内を回るが人気はなく、薄暗い通路。
ジルの部屋へと向かう途中倒れる部下達を見つける。
どの子も寝ているだけだったが皆一様に唸り顔をしかめていた。
ノックもせずにジルの部屋に入ると、ベッドに蹲る姿を見つけて駆け寄る。
苦しそうに胸元をおさえ、額には汗が滲んでいる。
「ジルッ!ジルッ!!」
揺するが目を開かない。
更に強めに揺すり、序でに頬も叩いてみた。
「ぅっ…」
ちょっと慌ててて加減を間違え、赤くなった頬。
だが幸いなことにその衝撃でジルの意識が戻ってきた。
「クロエ…中将…」
焦点が定まりつつある瞳に安堵し、抱き起こしてベッドに座らせる。
状況の整理をしようと口を開くが、その前に通路が騒がしくなった。
「ここにいて、見てくる」
着いてこようとするのを手で制して通路へと出た。
薄暗い先に松明を持つ集団がいた。
見慣れぬ格好に古めかしい武器を持つ。
変な仮面までつけている。
(これから向かう予定だった集落の部族…か?)
今軍艦は目的の島に着き、ポーネグリフが設置されているだろう集落がある側の岸壁に横付けしていた。
夜も更けていたことから翌朝に上陸する予定だったのだ。
(甲板の不寝番がいたはずだが…この様子だと眠っているのか…)
クロエの方とは逆に進む集団の背後へと忍び寄る。
なんとか会話が聞き取れる位置まで近づいた。
「指揮官は見つかったか?」
「いや、まだ…」
「下っ端ばかりだ」
「そいつらは縛り上げて連れていけ」
「了解」
数人が集団から離れていく。
目を凝らせば縛られた部下が担がれている。
(一人じゃ連れていかれた部下の捜索も出来ないな…ジルと動かないとだめか)
背後に気を付けながらジルの部屋に戻る。
「ジル、動けるか?」
「はい、いつでも」
既に戦闘準備を整えていたジルを連れて再度廊下へと出た。