• テキストサイズ

【ONE PIECE】人はそれを中毒という

第8章 私という存在



気が付くと深い霧の中に立っていた。
どこだろうとぼんやりする頭で考えていたら次第に霧が晴れて自分が厨房に立っていることに気付く。

「いた、クロエ!」
「?」

振り返れば懐かしい仲間。
仲間?

「お前また腹減ったのか?なんか作ってやろうか」

かちゃかちゃとキッチンで作業する男は確かに知っている。
共に冒険しているやつで、弓など遠距離系が得意。

「ほら、食え」
「ありがとう」

礼を言って受けとれば残り物ごはんで作ったとは思えない美味しそうなリゾット。
レンゲですくって食べれば暖かく懐かしい味がした。

いまだスッキリしない頭でどこか違和感を感じているが、目の前の光景は私の日常で。
どこもおかしいところはないはず。

「キャロットがもうすぐ島に着くってよ。遺跡探検楽しみだな!」

古びた地図を広げながら話す男の名前はなんだったか。

色褪せたような視界が不愉快で、強く目を擦る。
次に目を開ければそこは大勢の仲間で賑わう宴の真ん中に居た。

「やったな!大発見だぜ!」
「これを政府が高値で買うっていうんだ、俺ら金持ちだ~」
「きちんと分配するんだからね!でも一番の功績者のクロエには端数をあげちゃうわ!」
「怒涛の勢いで敵を蹴散らしてたからなぁ」

肩を組まれ酒を注がれる。

惚れ惚れする戦いだった、
凄いお宝だった、
あのデカイ石また見つけに行こうぜ、
クロエがいればどんなところでも安心だな!

そう、私の仲間…
長い間苦楽を共にした冒険団のみんな…

だれかがキャンプファイヤーの火を酒であおった。
火の粉が当たりに飛び散る。
目の前が真っ赤になり、火の粉は燃える船に変わった。

「クロエ!落ち着けって」
「もうそこまで迎えがきてるんだ」
「頼むから大人しくしてくれっ」

両手の自由を奪う鎖に向けられる刃。
得物を手に私を囲む仲間だった彼ら。
遠くに見える政府の船。

「もう逃げるな!そっちは行き止まりだぞ!」
「畜生ッ!10億だぞ!逃がすなっ」
「」

高い崖にたどり着き、眼下に広がる漆黒の海。
背後には私を狙う、仲間。

この世に絶望した私は、涙も出ない。
囲まれた私が出きることはただ一つ。

「やめろクロエッ!!」

海を背に、
空を仰ぎ見ながら、

私は自らの命を終わらせた。


/ 262ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp