第8章 私という存在
二人で暮らすようになってだいぶ経った。
ローの病気は彼のいう通りオペオペの実で時間をかけて少しずつ除去していき、今ではすっかり肌色も戻り健康体になっていた。
最初は上手く行かずに体力切れになりまた寝込んだりしていたが、能力に慣れてからはスムーズに行えるようになった。
「この能力は体力ありきだな」
「確かに長く能力使うとすぐ倒れてるね」
人間が倒れる様に免疫がついた。
頭さえ打たなきゃ大丈夫。
笑いながら言えば、キッチンにあった水筒が目の前にドンッと現れた。
「わっ!びっくりした」
「それ持って早く薬屋行けよ」
最近は能力に慣れるために可能な限りルームを張っている。
日常的に行われるシャンブルズに、毎回驚くクロエを見て面白そうに笑うのだ。
朝御飯のおにぎりを頬張るローが、クロエの皿にあったおにぎりを横取りながら時計を指差して急かす。
「あ、たらこ!取っておいたやつ!」
「うるせぇ、これ食ってたら遅刻するぞ。それに朝から何個食うつもりだ」
すでに五個目のおにぎりを手に持っていたクロエは時計をみて慌てて立ち上がる。
ローの言う通り、もう家を出なければならない時間。
「行かなきゃっ!」
「ほら、忘れ物」
先ほどの水筒を手渡すローに、クロエはお礼をいう。
「あ、悪ガキ達きたら、今日は鍋だよ!って言っておいて。たぶんまた食べていくでしょ?」
「わかった」
すっかりお仲間となった悪ガキ二人と+αはよくうちへ来る。というよりローの元へとやってくる。
そしてごはん食べて帰っていく。
ペンギン、シャチ、ベポであると紹介されたときはビックリした。
本を借りに出掛けてからなかなか帰ってこないローを心配して探しに行こうかと思った矢先、キズだらけの子熊を抱えた少年二人とローが帰ってきた。
なんてもの拾ってきたんだと思ったが、子熊はミンク族だったし、少年二人に苛められてた子熊を助けたら懐かれたようだ。
そしてなぜかローにボコボコにされた少年二人も、子熊同様ローに懐いていた。
なにがあったんだかよくわからない。
だがまだ珀鉛病も完治していないローに負けた二人はどんだけ弱いのか。または見かけによらずローは戦闘慣れしているのか。元海賊とか言っていたしな。
仲良さそうに遊ぶ(大半はローの能力の実験台)彼らを見ながら過ごす毎日は、楽しかった。