第1章 今の二人
落ち合う予定の島はとても大きく、観光資源が豊富なリゾート地だった。
クロエはジルを伴って駐屯地へ赴き、現状等聞き込みをしていた。とくに困ったこともなく、海賊が来たとしても島の自軍だけでなんとか出きていた。
やることもなくなったクロエは日程を調整してロー達が来る辺りから長期休暇を伝達した。
完全なる休暇は久々で、部下の中には故郷への定期便があるから故郷に帰る、というものもいた。
「いやぁ、サカズキさん怖かったね」
「俺はいよいよ左遷されるだろうと決意を固めてしまいましたよ」
ならんで歩くジルにクロエは先ほどのやりとりを思い出して腕をさすった。
ロー達との再開を長く取りたかった為に、ここに着くまでは真面目に働いた。
海賊を潰し、海賊を潰し、海賊を潰し…
まぁ殆どやってることは同じだが傍迷惑な、支部では手を焼くやつらを片っ端から監獄に送っていた。
おかげで黄ざるから誉めてもらったし、青キジにはご承知の通り。甘々な彼は働きすぎだから即休みなさいなと言ってくれた。
だが不真面目なクロエが真面目に働いたことにサカズキは違和感しかなかったようだ。どういう心境の変化か、なにを企んでる、とまで言われてしまった。
「まぁ疑われるのは自業自得ですね」
「手厳しいねぇ」
売り子から受け取ったアイスコーヒーで喉を潤しながら笑う。普段真面目に仕事をしないから疑われる。
身から出た錆だ。
「ジルは里帰りしないの?」
「そうですね…」
ジルの故郷はここから定期便が出ていた。
クロエについて何年も一緒にいるが彼が里帰りしたのは一度だけだった。
「あなたはどうされるんです?故郷は遠いですよね」
「私は飲み友探しに出るよ。どっかホテル借りてね」
「ホントにお酒が好きですよね」
船に自費でバーカウンターを設置するほど酒好きのクロエ。よく居酒屋に顔を出しては飲み友達をつくっていた。
「では今回は俺も帰ります」
居残る組にも有能なやつはいるから自分が抜けても休暇の間なら大丈夫だろう。軍艦の主である貴女も居るんですからね。と居残り組リストを眺めながらジルは言った。