第8章 私という存在
「おつるさんおつるさん」
本部についても後をついてくるピンクの鳥。
まだ時間が早いとか言って暇潰しに付きまとわれている。
「なんだってそんなもの引き連れてるんだい」
「勝手についてくるの!あげる!」
「いらないよ」
途中で会ったおつるさんにドフラミンゴを擦り付けようとしたが、拒否される。
しっしっとするおつるさんの手をそのまま真似してドフラミンゴにしてやると、またあの笑い方をする。
邪険にするのを気にも止めない。
まだこのままかと項垂れていれば、意外にもドフラミンゴはおつるさんの方へと着いていった。
「丁度いい、おつるさんにも用事がある」
ガッツポーズである。
擦り付け成功!と言えばおつるさんがしょうがないねと言ってドフラミンゴをつれて去っていった。
頭痛の種を取り除いて身軽になったクロエは自室へと戻る。
自分の部下達はクロエにドフラミンゴを任せて(押し付けて)さっさと軍艦のメンテナンスやら補充など雑用に精を出しはじめている。
その逃げ様ときたらみごとなもの。
やっぱり海軍にとって七武海だろうと海賊は厄介者だよなと思った。
休暇明けで事務処理に追われるが、あと数日もすれば軍艦を出しての任務が待っている。
任務はいたってシンプル。新たに発見されたポーネグリフの回収。
体を動かしたい部下達が海賊相手じゃないのかとぼやいていたが、ポーネグリフだって簡単な場所には設置されていない。
大体がどこかの部族に守られているのだ。
加盟国であれば引き渡しの条約があるから部族など関係無しに持っていくが、今回は珍しく非加盟の連邦国のひとつで、さらにその中の孤立した部族が所有していた。
面倒な案件のため、中将である自分に任務が回ってきた。
書類をまとめながらジルは長期になりそうですねと言う。
「相変わらず長期任務になると、じいさん達は動かないんだから…あれ奪ってくるの大変そうだから嫌なんだよ…」
「今回は秘境の地での奪取任務ですからね…守っている部族も情報が殆どなく、偵察からはじめなければ危険でしょうね」
はーやだやだとため息付けば同意しますと珍しくジルも同調した。
「まだ数日ありますから、準備は万全にさせておきます」
「指揮頼んだよ」
「お任せを」
優秀な部下を持つと楽である。