第6章 休暇(後半)
今日は映画館とやらを見にきた。
もちろん軽く変装済みだ。海兵にローといるところを見られては面倒だけではすまなくなる。
新しく出来た娯楽施設に少しテンションが上がる。
映画の内容は面白かったのだが、この隣の男は見てる間も差程表情の変化もなくスクリーンをただ眺めていた。
「どうだった?」
「男女の中身が入れ替わる現象なんざ、能力使えば実現できるからな。珍しくもねぇし恋愛ものは興味ねぇ」
「…確かに」
そういえば人格の入れ替えできたなと思い出した。
映画は話題性があったから見にきたが、人混みがすごく早々にその場から立ち去ることにした。
ふらふらと近くの飲食店街へと赴き、コテージで食べる食材を選ぶ。
料理する気はなかったので出来合いのものばかり選んでいたが、たまにローが生鮮食品も買っていた。
「料理するの?」
「簡単なものだけな。出来合いの物だけだと濃すぎる」
「女子か」
「お前はもっとバランスを考えろ」
酒に合うつまみばかり選ぶクロエに野菜をいれるロー。
実を言うとクロエは料理が苦手だった。
出来なくはないがなぜか不器用にしか出来ず、買った方が美味しいからほぼ買っている。それに軍では食堂があるため全く困らない。
因みに幼少の二人で過ごしていた頃は料理を身に付けたローが食事全般を受け持つまでおにぎりが多かった。
ローの好物でほんと助かった。
「ローはいいお嫁さんになるよ」
「お前は努力しろ」
「あ、私たち中身を入れ替えれば良いんじゃない?」
「何がいいのかわからねェ」
いいこと思い付いた!と顔を向ければ呆れ返ったローの顔。
ここじゃ危険だからコテージには戻ったら入れ替えしようと提案する。
そして私の姿で料理する姿を映像に残したら自慢できるのでは?
ふふふとバカ丸出しの考えに浸るクロエを引きずってコテージに帰るローは、この後拝み倒されて仕方なくクロエの希望を叶えてあげるのだが、それを後悔することになるとはこの時は思ってなかった。