第5章 最速・最年少記録を持つ女
『お待たせ。ざっと見た感じはいなかったぜ』
『まぁそう簡単には鉢合わせしねぇよな』
後から来た海兵がバーガーを沢山かかえて合流していた。
ガサガサと包みを広げ始めた海兵達は会場の入り口辺りをしきりに見ている。
「誰か探してんのか?」
「キャプテンじゃないよね?」
ペンギンとベポがなにも騒ぎは起こしてないはず、と互いに確認する。
大きな街には海賊達も長期滞在する傾向にある。とくにここのような観光地であれば尚更。
『超美女なんだろ?』
『近くで見たやつの話ではそうらしいな。見てぇな』
『休暇が終われば支部に顔出すんだろ、クロエ中将は』
探してんのクロエかよっ!とペンギンがバーガーを詰まらせながら驚く。
ちらりとクロエを見れば聞いているのかどうかわからない顔で二つ目のバーガーに手を伸ばしている。
『上司が美人とか、クロエ中将の隊羨ましいよな』
『遠目なら見たことあるけど、めちゃくちゃ良いカラダしてんだよな』
『ははっ、上司相手にその言い方だめだろ』
『でも実際羨ましくねぇ?うちの支部男ばっかだからああいう女、近くにいてほしいよな』
『近くにいたってお前なんか相手にされるかよ』
『案外好きものだったりして。あれ、噂になってる奴誰だっけ』
『副官のジルって男だろ。番犬のようにくっついて歩いている奴』
『文字通り飼い犬だったりして』
下衆な笑い声に、こいつらのほうがよっぽど討伐すべきだよなとクロエが真顔で呟いた。
少しこの顔に恐怖を覚えながら、心底キャプテンがここにいなくて良かったとペンギンは思う。
間違いなく能力発動し、刀を抜いていただろう。
「クロエ大丈夫?」
ベポがこそっとクロエに耳打ちする。
下品な内容で、なおかつ自分のことを話されていていい気はしないと思ったベポが尋ねるがクロエはいつものこと、と言う。
「こんな話題入隊当時からずっと言われてきているから慣れたよ。言いたい奴には言わせておけばいい」
「ずっとって…よく耐えてるね、クロエ」
「耐えてなんかいないよ。最初の頃はぶちのめしてたよ…だって枕営業で階級あげて貰ってるとかさ、ムカつくじゃん」
「どの世界ものしあがろうって言う女は大変だな」
「だから早く階級あげてそいつらの地位を剥奪してやったよ」
「女怖ぇ…」