第3章 休暇(前半)
「え、バレたの?」
「ローがバラしたの」
ここは潜水艦。
遠目で見たことはあるが中に入ったのは初めて。
甲板にいたベポに会い、中を案内して貰えることになった。もちろんローも後ろにくっついている。
「いい加減もういいだろ。俺を信用してんならクルーにバラしたって問題はねェ」
「…いいけどね」
そのうち同じクルーになるんだから、と付け加えられれば黙ってしまう。
もちろん自分の目的が達成されれば海軍なんて用はなく退職し、ローの元へと行くつもりではある。
だが元とはいえ海賊の天敵である海軍だった人物をすんなりと仲間になど出来るものじゃないし、自分なら無理だと思っている。
彼の仲間から信用される以前にクロエが信じようとしていないことは、ローにはバレていそうだが。
こればかりは生い立ちが複雑ゆえ仕方がないのかもしれない。
「その厚塗りの臭ェ化粧落とせ」
「失礼ね…まだこのままでいい。素顔は、まだ…」
化粧を落とせば海軍中将と結び付く。
何か言いたげな顔をしていたローだが結局はなにも言わずにいた。
案内をして貰いながら先ほど一緒にいたクルー達以外とも挨拶を交わす。
みんな謎だったローの恋人が突然来たことに驚き、興味が尽きないのかぞろぞろと後を付いてくる。
ここは誰の部屋で、どんなことをしてる部屋だとか、さすが医者の乗る船だけあって医療設備は一流で、他にも海賊船らしからぬ独特な設備が揃っていた。
案内が終わる頃にはほとんどのクルーがクロエ達の後を付いてきている。
赤の他人の境界線はどこへやら、既に仲間のようにクロエに接する彼らが眩しかった。
「案内してくれてありがとう。私はそろそろお暇するよ」
「え、クロエ帰っちゃうの?こっちでご飯とか食べようよ」
ベポの誘いは嬉しいが、なんとなくコテージに帰りたくなってしまった。
仲の良いクルー達を見ていて、尚更。
「ごめん。また次の機会に誘って?」
項垂れるベポにこそっと暇になったらコテージおいでよ、と伝える。
少し笑顔になってくれたベポを一撫でし、クルーのみんなに挨拶をしてローを伴って潜水艦を後にした。