第3章 休暇(前半)
ローの船からコテージへと戻る道。
口数少なく黙々と歩くクロエにローが溜め息を付いた。
「バラしたこと怒ってんのか」
「……」
「…不安なのか」
彼のクルーにバレたのは別にいい。
遅かれ早かれバラす相手なのだから。
問題はクロエの臆病な心。
「…ったく、」
むにっと頬を摘ままれ、抗議に顔をあげると思いの外優しい顔に少しビックリしてしまった。
「お前が海兵だからって邪険にするような奴はウチにはいねェよ」
「そんなのわからない」
「良くも悪くも俺をバカ正直に慕ってくるやつらばかりだ。その俺の女なんだから、文句はでねェ」
「あぁ…ローのこと大好きすぎて宗教か?ってちょっと怖く感じた気もする…」
圧倒的なカリスマでクルーを引っ張っていくロー。
揺るぎないその瞳に惹かれた人は多い。
出会った頃の絶望の淵に立ったような、倒れてしまうような危うさは既にそこにはなく、己の目的にまっすぐ進む意志の強い瞳。
とても綺麗で、素敵で、その先に見るものが羨ましかった。
「過去と今を一緒にするんじゃねェ。早くやることやって、俺のクルーになれ」
「…善処する」
そんな彼を支えるクルーの皆が少し羨ましかった。
そんな支えてくれるクルーを持つローが羨ましかった。