第3章 休暇(前半)
「キャプテンってなんで恋人の事秘密するんだろうね」
「さー…守るため、だったらカッコよすぎない!?」
「一般人の彼女を、危険から守るためってか?」
「賞金首だしなぁ」
惚れる~だの騒ぐ大概のクルーはローを勝手に美化して崇拝するかの如く尊敬している。
「シャチは色々知ってんだろ?幼馴染って羨ましい~」
「…まぁ」
「なんだ今日はやけに口数少ねぇな。いっつもキャプテンの恋人についてあれこれ教えてくれるのによぉ」
「お、おいっ」
ピクリと反応するクロエにシャチが慌てて止めにはいるも遅かった。
「美人でスタイルよくて一見どこぞの令嬢に見えるけど、喋ったら男勝りで大飯食いで酒豪で…」
「へぇ…」
「も、もうやめてくれ…」
こちらを見ながら涙ぐんで止めに入っているシャチに冷たい視線を飛ばしながら、まだクロエのことについて聞いた話を披露するクルー。
(本当にシャチの口は軽いんだから…)
信頼するローが共にいる仲間ならば、正体がばれてもその時は正直に説明しようとは思っていたが、こうも口の軽い奴が傍にいたかと思うと残念な気持ちでシャチを見るしかなかった。
「あ、思い出したけどキャプテンの彼女ってキャプテン並みに強いんだっけ?」
「じゃぁ一般人じゃねぇな」
「キャプテン並みに強くて美人…羨ましい!アタシ会ってみたいな!」
既に海軍だということもばれてないか少し心配になるクロエだが、次の言葉に思わず反応してしまった。
「キャプテンより強かったりして」
「まさかぁ。女だろ?」
「偏見はよくないね。あんた、アタシより弱いじゃん」
イッカクがぺしっと一人のクルーをはたく。
「確かに今の世の中、強さに男女は関係ないよね!私も船長さんよりも船長さんの彼女の方が強い可能性全然ありだと思うよ~!ね、シャチさん?(そうだよな、ん?)」
「(ビクッ…)え、おれ!?」
「シャチさんなら彼女さんのこと知っているんでしょ?どっちが強いの?(私だよね?)」
無邪気に会話をつなげて笑顔でシャチに詰め寄るクロエ。その笑顔にシャチが青褪めていく。
だがシャチが意を決して発言しようとする前に、クロエは危険な空気を纏いながら近づいてくる一つの気配に気づいた。
(これはもうバレちゃう流れだな…)
近づいてきたのは、朝コテージに放置してきた男だった。