第3章 休暇(前半)
「どうも~急にごめんね、同席しちゃって」
「全然~!よろしく~」
隣に座っているシャチが、クロエの変わりように若干引いていた。
テンション高めでいつもよりトーンの高い声。
あざといが可愛らしい仕草はシャチの好み。
「めっちゃ可愛いじゃん、よくお前ゲットできたな」
「うるせぇ」
クルーの一人がシャチを小突きながらニタニタと揶揄う。
まさか相手が海軍中将でローの恋人とは露ほども思っていない彼らはクロエにやいやいと絡んでいく。
「名前は?なんて呼べばいい?」
「クロエよ。そのままでいいよ」
「クロエちゃんか~名前まで可愛いね」
「この島に住んでるの?」
「なんでシャチと一緒にいるの?」
次々と投げかけられる質問にもニッコリ笑顔で答えていくクロエに、久しく見ていない幼く溢れんばかりのクロエの笑顔にちょっとドキリとするシャチ。
いかんいかんと首ふりながら、クロエにそっと囁く。
(本名教えちゃっていいのかよ)
(別名考えるの面倒だし、呼ばれなれないし。一時のシャチのデート相手なんて記憶に残らないでしょ)
(まぁ、そうだな…)
元の声のトーンで返されたそれにほっとしてしまうシャチだった。
ごはんも運ばれ大きなテーブルを囲んで昼食をとる。
シャチが買ってきたサンドイッチに齧り付くクロエは、シャキシャキレタスがおいしいなと咀嚼していたら、シャチとは反対隣りに座る女性のクルーであるイッカクがシャチの肩をたたいた。
「ねぇそういえばキャプテンは?島に着いたあたりから姿が見えないんだけど」
「え?」
ギクリとシャチが固まる。ちらりとクロエを見る。
まさか隣に座るこの女性と逢引きしていますなんて言えるわけもない。
(なんだ、見るなよ)
(なんて言えば良いんだよ!)
目で訴えてくるシャチに知らん、とそっぽを向く。
「あー…俺も知らねぇ」
「また放浪癖?誰か知らないの?」
周りのクルーは知らねぇと。
ただ一人がそういえば、と話をつづけた。
「キャプテンの恋人のところ…とか?」
「あー、謎の恋人!この島にいるの!?」
「知らねぇけど、ずっと前からこの島に長期滞在することをベポに伝えてたらしいぜ」
誰かがそういえば、見たいなー!とはしゃぐイッカクに周りも同調する。