第3章 休暇(前半)
「ホント俺怒られないよね」
「大丈夫。今日は二人で楽しもうよ」
「キャプテンが聞いていたら俺殺されるなぁ」
今日はシャチと買い物に街へと来ていた。
昨日のローの暴挙に怒ったクロエは朝の弱いローをコテージに残して街へ降りていた。
そこで同じように一人で買い物をしようと街へ来ていたシャチを捕まえたのだ。
「今日はやけに派手な姿だな」
「一応私の部下たちもこの島に休暇で居るからね。変装」
「確かにいつものお前からしたら別人だな。超俺好み」
「ははっ。じゃぁシャチのデートのお相手ということで」
「クルーが居てもそれであしらえるな」
いつもはシンプルな装いだが、今日のクロエは派手な見た目だった。
いつもは束ねる長髪も緩やかに巻かれ、メイクもきっちりと色を入れているだけでもだいぶ印象が変わっていた。
元々美人な彼女が色をもって着飾るだけでもモデルのように華やかで艶やかになっていた。
「意外だったのは、そんな服も持っていたことだな」
「抜け出す時の為にいくつか持っているよ。もっと際どい夜のお姉さん風のも」
「それ見てみてェ~」
「今度抜け出すときが夜だったら着てあげるよ」
やりぃ!とはしゃぐシャチに男って単純だなぁと年上だが弟を見ているかのような心境で彼を眺めた。
ショッピング街を少し抜け、飲食店が立ち並ぶエリアへときた二人は早めの昼食をとるべくカフェへと入った。
店内よりはテラス席の多いその店のなるべく目立たない席に腰かけ、シャチがカウンターへ注文しに行く。
待ってていいと言われたので素直に席に座って待っていると見慣れたツナギが数人、店へと入っていった。
予想通りハートのクルーである彼らはカウンターにいるシャチに気づいて話しかけていた。
なにやらチラチラこちらを見る彼らに、シャチが少し困った顔をしていた。
暫くそれを見ているとシャチがこちらへ来て申し訳なさそうに言った。
「クロエごめん、お前を紹介しろってうるさくって。いつも一緒にいる女とか紹介してたから断りづらくてさ」
「別にいいよ。変装してるからたぶん気づかれないと思うし、別人を演じてあげるよ」
「わりぃな、助かるっ」
手でごめんポーズをするとシャチはクルーのもとに戻って行く。
どうせならシャチ好みの女を演じてあげようかと、こちらに手をふるハートの面子に手を振り返した。