第20章 番外編 勘違いから始まる
クロエの手を縛っていたマフラーを取り外す。
縛ったところは擦れて赤くなり、掴んでいた腰には手跡がくっきりと付いていた。
もはや強姦といってもいい行為に申し訳なさがあるが、こんなクロエの姿を眺めているだけでむくむくと勃ち上がってくるのだから男というのはどうしようもない。
達した余韻で虚ろだったクロエの瞳が回復し、自由になった手で起き上がるのを隣に座り眺める。
やってしまった罪悪感で目は合わせられないが、やっぱり昨日のことは胸に引っ掛かっている。
言葉を遮るように行為を進めたが、クロエが勘違いだと言おうとしていたのは気付いていた。
罰の悪さから黙っていれば、いきなり頬に濡れた重いものが投げつけられる。
側に落ちたのは噛ませていたマフラーだった。
マフラーから辿るようにそちらを見れば、ベッドに膝立ちしたクロエがこちらを見下している。
その顔は久しく見てないキレた顔。
幼い頃から彼女と過ごし何度か見たその顔に、自然と背筋が伸びてしまった。
「好き勝手やってくれたわね」
地を這うドスの聞いた声に懐かしいなんて現実逃避しても駄目で、後ろに引き倒されて仰向けになった体の上に乗っかってきた。
それは艶っぽい光景に見えなくもないが、本人達は蛇に睨まれた蛙の如し。
見下ろしてくるクロエの顔は笑っているが瞳は凍えそうなほど冷たい。
「昨日はね、違法薬物の取引現場に潜入していたの。裏カジノが会場だったから部下と見合う格好で、ペアを組んでの潜入」
「…」
「細い路地裏からそこは繋がっていてね、案内人がいないとわからない隠し扉から入れる。おそらくだけど、貴方が勘違いしている相手は私の部下」
鼻がくっつきそうな程顔を近づけられ、間近でクロエの瞳を見る。
視線をそらそうにも先読みされて両頬を掴まれているため動かせずにいた。
体が不自由なわけでもないから女一人くらい自分の体の上からなんて簡単にどかせられる。
だけど、精神的に動けないのだ。
怒っているクロエからは逃げられない。
「さて、ヤキモチ焼いて恋人に強姦紛いのことをしたローさん。どう償うおつもり?」
「…」
わかってる。
悪いのは自分だ。