第2章 幼馴染みたち
まだ朝日が登って間もない頃、クロエはひとり外へと出る。
今日も晴れ渡るだろう空は白んでいた。
そのまま海へと足を進め、暫く揺れる海面を眺めて歩く。なんだか船から見るいつもの景色とは全くの別物で不思議な感じがするのだ。
そのまま浅瀬に座ってみる。
程良く冷たい海水は、汗ばむ気温に丁度良い涼をもたらす。服も濡れるがなんだか気持ちがよかった。
「なにしてんだ」
ローが浜辺にいた。波の届かないギリギリの位置に立ち、こちらを呆れたように見ていた。
「水浴び?」
「…特に意味はねェんだな」
その通りだが。
後ろに手をつき体を支え、空を仰ぎ見る。
雲一つない空は徐々に青みを帯びてきていた。
「気持ちいいよ。ローも来る?」
「俺は浸かれねェだろ」
能力者なんだからと当たり前の返答をすれば、支えてあげるからとクロエがこちらへ来る。
いい、と否定するも濡れた手で先に捕まれては抵抗する力もなくクロエに引っ張られた。
ザブザブと勢いよく引っ張られ数歩歩いたのち膝をついた。
やっぱり海は厳しいんだねと笑うクロエを睨みあげるローに、怖っと彼女は肩を竦めた。
「いまなら死の外科医を捕獲することができるね」
「突き出すか?」
「まさか。私が捕まえても賞金もらえないもん」
タダ働きになると文句を言う彼女に本職じゃねぇのかと返す。
「あ、そういえばね」
膝をついた時点で諦めたローは海水のなかにクロエと共に座り込んでいた。
脚の間に座らせたクロエの後頭部に顎をのせて水平線を見つめた。
「懸賞金、あがるよ」
おめでとう、とこちらを振り返ったクロエに「あァ」とだけ返すローだが、仏頂面の中にも嬉しさが隠れていた。
「このアゴヒゲいつから?」
「さァな…覚えてねェ」
「手配書の写真変わったよ。ミーハーな子達に人気」
他の隊ではわからないが、クロエの船では女海兵達のイケメンランキングなるものがあるとか。
規律の厳しい環境で生きる彼女達の娯楽だ。
「話題のルーキーランキングで、ぶっちぎりの一位よ」
「なんだそれは」
「因みに二位はなぜかジュエリー・ボニー」
「イケメンランキングなのに女も入ってるのか」
「笑っちゃうわよね。三位はロロノアとX・ドレークが同位」
「……暇なのかお前の隊は」
「仕事はなるべくしたくないからね」