第2章 幼馴染みたち
「そういえば、クロエの首どうした?」
薬を飲んだがまだ効果は出ていないシャチの顔は青い。
ヘロヘロしながらソファにもたれ掛かりながら顔だけこちらに向けていた。
「首?」
「俺も気になってた…鬱血してね?」
「てか、すっげぇ跡。なァにに噛まれんだか」
「いやんシャチったら♪分かりきったこと言わないデェッ」
ズパァンッと小気味いいを通り越して凄まじい音が二回。
クロエが二人の頭におつまみが入った袋をスライディングして投げつけた音だった。
「よくそんな音が出たな」
「あの中身、割りと固い煎餅だから」
沈んだ二人を横目に座り直したクロエはローにもその煎餅を向けた。
「次こんなことになったらお見舞いするからね」
「そんなんで許すなら何度でもやるぞ」
向けられた煎餅を払いのけるローは、少しやり過ぎたかと反省らしきものはしている。
だから言葉とは裏腹に跡をなぞる手は優しかった。
「やらないでよ、嫌がってるでしょ」
「本気で嫌がってンのか」
クロエの手を引いて自身に引き寄せたローは、白い肌に目立つ跡を舌でなぞるように舐めた。
少し痛むのかビクリと体を震わせたクロエから、甘い痺れもあったのか鼻にかかる声が漏れた。
こんな反応をしてくるから、本気で抵抗しないクロエに自制が効かなくなるのだ。
「ロー…」
非難する視線を向けるも意地の悪い笑みを浮かべるロー。
本気で嫌ならばクロエは逃げ出せる力はある。
「受け入れろ」
俺を。
飄々としていた表情がそのままに赤く染まる。
彼女の愛らしい表情に、ローは顔を近づけた。
「あ、どーぞどーぞそのまま」
「いやー生で見るとこっちがテレちゃう」
唇が重なる前に気付いた気配。
というか、それまで気付けなかった気配。
ニタニタと頬を染めてこちらを見る二つの顔。
先程クロエから受けたたんこぶがお揃いの位置にあった。
クロエはローに無言で鬼哭を手渡した。
「気を楽にしろ」
「「ぎゃぁ~~~っ」」
刀身がキラリと光った。