第19章 番外編 いつかの未来
ゴウンゴウンと機械音が響く。
慣れた自船の潜水時の音だ。
バタバタと慌ただしく走り回る音に加えて声が響く。
なんなんだ、と目を開ける。
あれ、また眠ってしまっていたのだろうか。
さっきも目を覚ましたばかりなのにまた目を覚ます感覚を不思議に思う。
辺りを見渡せば医務室で寝ていたようだ。
仄かに明かりがつけられ、潜水の為に窓の外は暗闇だ。
起き上がった拍子に頭からタオルが落ちる。
少し濡れたそれは熱が出たときに乗せるもので、枕を見れば氷のうだった。
また熱が上がったのだろうか。
何気なしに横をみれば自分と同じようにタオルを額に乗せられたローがいた。
静かに寝ているようで、僅かに胸が上下している。
「あれ、なんでローも…」
じゃぁ息子はどこに行ったのだろうか。
仲間の誰かと共にいるのか。
降りようかとベッドから足を出したところで医務室のドアが開く。
ドタドタと仲間達が雪崩込んできて目を丸くする。
「目が覚めたのか!」
「大丈夫か!?」
「毒か!?」
ガヤガヤと矢継ぎ早に言葉を投げ掛けられ、寝起きの頭では処理できずに一旦無視する。
なんでローも寝てるのかと聞く。
それにシャチが答えてくれた。
「二人とも甲板で倒れてたんだよ。熱もあるし取り敢えず医務室に運び込んだのがさっき。辺りに船も人も居ないからなにが原因か分かんなくて…」
取り敢えず外傷もなければ少しダルくて微熱があるだけで、特に体に異常はなさそうだ。
それを伝えていればローが目を覚まし、辺りを見渡したあとに起き上がる。
頭の働かないローは結構レアで、顔から険しさがなくなり何時もよりいくぶんか幼く見える。
頭をはっきりさせようと目を擦ったり、ぎゅっと瞑ったり開いたりする様は可愛らしいなとぼんやりとした思考の中で思った。
ローも目を覚ましたことにより安堵した仲間がおいおいと泣きべそをかき始める。
トップが突然倒れて理由も分からない状態が余程不安を駆り立てたのか、良かった良かったと壊れたおもちゃのように言い続けている。
そんな中、比較的冷静なペンギンに状況を聞いたローはこちらを振り返った。
〉つづく